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「うん、これで下準備はオッケーね。あとは攻撃方法だけれど剣だと何だか可愛そうだし、魔法を一発か、打撃系かな? 魔法術式展開、肉体強化、超肉体強化」
全体への強化魔法を行い、両足と右腕に更に重ねた。ドラゴンは未知なる脅威に身に危険を感じたのか、咆吼ではなく伊吹で抵抗する。
それを合図に、シルヴィアは駆け出した。
ステップを踏むように軽やかな足取りで、躊躇いなくドラゴンに突っ込んでいく姿は、蛮勇にも見えただろう。
「ふっ!」
しかし彼女は最短距離かつ、五体満足のままドラゴンの目の前に飛びこみ、一撃を見舞った。
普通の少女であれば、ドラゴンの頑丈な鱗を前に骨が折れただろう。だがシルヴィアの一撃は重く、ドラゴンを地面に叩きつけるだけの威力があった。
「がふっ!?」
どごっ、と倒れ込む音と土煙が舞う。
シルヴィアはドラゴンの背を足蹴りに「ビクトリー!」と誇らしげに叫んだ。
ドラゴンと契約を結ぼうと、ほくほくしながらステータス画面を開くと、ポップアップ画面に誓約、使い魔契約か隷属契約の選択が表示され、契約条件の記述に「聖職者一人の立ち会いが必須」と書かれていた。
「……条件未達成。しょうがないわ、先に洋館の方に……ん?」
ドラゴンを足げにしたのち、洋館のドアノブに手を掛けたが弾かれてしまった。再度ステータス画面を開き、分析をした結果、入出不可とポップが出ている。
「入出許可は、この空間の購入のみ……なのね。金額的には出せないことはないけれど……」
それは冒険者として自分で働いた金銭であり、逃走資金でもあった。
その三分の一を失うのは正直痛い。
今後のことを考え、シルヴィアは慎重になるものの拠点のための先行投資なら──と考える。
「けして外観が好みだからという安易な考えで決めたんじゃない!」
「随分と楽しそうだな」
「ん?」
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