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(ラフェドが覚えていないのなら、どんなに親し気でも油断したらダメ……)
「……に、してもよく外観だけで、購入しようと思ったな」
「それは購入しないと扉が開かないですし」
「……そういう時は、この竜を起こして買う前に内見させれば良かったんじゃないか?」
「大人しく明け渡すとは思えなかったので……。ちなみに私の立場なら負けても拠点は全力で死守します」
「お前は家を奪われた経験でもあるのか……」
「いやないですけど?」
聖女候補らしからぬ発言に、アルベルトは頭を抱えていたが、すぐに持ち直したようだ。「でかい買い物をする時は、慎重になれ」など忠告を受けたので、シルヴィアは力強い笑みを返す。
「外観に一目惚れしてしまったので……最悪雨露しのげればいいかなぁ、と思っていました」
「は?」
野宿よりはマシというシルヴィアに、アルベルトは「どういう生き方をしたらそうなる」と若干引いていた。そんな大司教を無視して、シルヴィアは家の中に入る。
幸いにも洋館の中は小綺麗で、とてもお洒落だった。一階、二階ともかなり綺麗で整っており、調度品や生活に必要なお風呂や水回りも問題なさそうだ。
(わぁ……!)
ナチュラルで温かみのあるリビングで、木製の楕円形のテーブルに、ベージュ色のソファは三人掛けのものが、二つと一人用のものが三つと中々に数が多い。
暖色系のラグも落ち着いていて、触り心地もいい。インテリアなどは木製の物が多く、壁には様々な本棚が見受けられた。
ドラゴンの住処を強引に略奪した狡猾な人間は、早くもこの家に愛着が芽生えつつあった。
アルベルトはシルヴィアが強奪した家だと知っていながらも、別段気にせず本棚を物色している。
(まさに理想のお家! 内装や調度品も最高だわ。何としても、玄関前で倒れているドラゴンと従魔的な(?)契約を結ばないと! この世界の本に、ドラゴンは強い者を好むって書いてあったし! 一発殴って力関係をハッキリさせたので、少なくとも同じテーブルでの交渉の余地はあるはず……!)
「……なるほど、この本はここにあったのか」
(本?)
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