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第7話 早速呪われました
アルベルトは我が物顔で、リビングの本棚から黒い背表紙の本を取り出していた。
見た目的に魔導書めいた上製本だが分厚さはなく、絵本並みの十ページ前後の非常に薄い本だ。聖職者らしく、禁書目録的なものを回収しているのだろうか。
そう思ってのだが、タイトルを見てシルヴィアは固まった。
(え……)
ページのめくれる音が耳元で聞こえ――。
ふと気付けば、先ほどまでいた部屋のリビングではなくなっていた。真っ赤な絨毯に、大きなシャンデリアが吊され、壁と壁には飴色の本棚には様々な本が詰まった大きな図書館内に早変わりする。
(ここは……? 別空間?)
『やあ、初めましてラフェドの婚約者殿。いや転生しているのなら元、と言った方がいいだろうか』
「!?」
艶やかな闇色のタートルネックにズボン、いかにも魔術師というようなローブを着こなす美青年が佇んでいた。褐色の長い髪に、オッドアイの瞳は軽薄そうな色をしていて、シルヴィアは警戒を強める。
「……さあ、なんのことでしょう」
『あはははっ、用心深いね。でもそんなのはどうでもいい。君と彼が再び出会うという条件が揃ったからこそ、この本が出現したからね。…………そして物語は繰り返す、これはそういう類いの呪いだよ』
「呪い……」
天気の話をするような気軽さで青年は語るが、その物語の顛末を知るシルヴィアは息を呑んだ。
シルヴィアの前世、時折芽衣李とラフェドの顛末は、ハッピーエンドと呼べるものではなかった。報われない後味の悪いバッドエンドという幕引きである。
(この声……、口調も、何処かで……)
遠い昔の何処か。
何かが終わる終焉の場所。
雨音と不快な嗤い声。
あれは――。
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