第1話 元悪役令嬢は招かれる

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 発言したのは青黒い色の長い髪の男だった。耳前の髪を三つ編みでまとめており、頭には捻れた黒い角、ヴィオレ色の瞳、褐色の肌、造形が整った美しい男は黒の軍服に身を包み、チェスに似た白い駒を箱庭遊戯の入り口である《原初の迷宮》へと適当に並べた。  魔族の王ラフェドの並べた駒へと視線を向けると、様々な声が箱庭へと落とされる。 「さて――今年はどんな結末になるか」 「にゃははは、今回は強くて頑丈な子がいいな~」 「今回はせめて二人ぐらいは、聖女になってほしいものだな」 「今年も各季節の調整が大変だろうから、聖女候補には頑張ってもらうとしよう」 「にゃははは~、今度こそボクと踊りきれる子がいいな」 「おい、フレデリック(死神)、早々簡単に壊してくれるなよ? お前は加減を知らないからな」 「にゃ~、それを言うならベルナールに言ってほしいな。領域に入った瞬間に、精神圧で魂ごと滅ぼすなんて残酷すぎないかい?」 「…………僕は、そんなこと望んでないのに」 「よくいうよ。一番エグいくせに」 「今回は面白い子がいると、実験のしようがあるのだけれどな」 「そうね~。久し振りに闇オークションの目玉にほしいわ」  それぞれの反応を見つつ、ラフェドは最後の駒であるシルヴィアを転移させた。  今回の遊戯は、今までと違い退屈しないだろうという自負がある。  それはラフェドが()()()()()()()()、シルヴィア・ローランの生き方を見続けてきたからこその判断でもあった。男にとっては気まぐれかもしれないが。  簡単には壊れない玩具であり、失望させない愉快な者だ。そう思うとラフェドは口端を釣り上げた。  円卓を取り囲んで人外たちが自分たちの欲望を口々に呟く。  これは気まぐれで、残酷で奔放で狂乱の遊戯が幕を開ける。
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