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万が一面倒なことになったら、武力行使になることも吝かではないとシルヴィアは決意した。幸いにも自身の肉体や持ち物、ドレスなどに変化はない。
周りには私と同じようにパーティー会場から連れてこられた令嬢や、侍女に、女子学生など様々だ。一貫して少女だけというが気になった。
全員で十人ほどだろうか。
どことなく空気がひんやりしており、誰かに見られている感じがしなくもない。
『ようこそ、我らの国、箱庭へ』
唐突に空から声が振り落ちる。
耳に残るバリトンのいい声に、うっとりとする少女が何人か見受けられた。
(オーリム?)
『今回は聖女候補にふさわしい者たちを、招集させてもらった。これは神々あるいは高位種族からの、ささやかな祝福だと思ってくれてかまわない』
(聖女候補? ……神々? この声……何処かで……うーん)
突然、白い薔薇の花びらが空から振り落ちた。幻想的で美しいとシルヴィアは思いながら、声の主の話に集中する。
『現在存在する迷宮を抜けると、薄い灰色の街に辿り着く。そこには教会があり、そこで聖女候補の登録をするように。ここでの衣食住などの生活保障は確約しよう。それから聖女となるべく、試練やら依頼をこなすことで実績を積めば聖女と認定される。称号を得た者は、その功績を称えどんな願いでも叶えよう』
「どんな願いも……」
「叶えることができる!」
「選ばれた……者たち」
「聖女候補……おとぎ話だと思っていたわ」
どんな願いも叶える――それは猛毒にも近い甘美な囁き。
生活の保障、願い事が叶う。
シルヴィア以外の女性は、この状況に困惑あるいは興奮している者が多かった。自分たちは特別だと、選ばれた優越感ゆえだろうか。シルヴィアは「試練やら依頼」という言葉がどうにも気になったし、期限も意図的に伏せているのか発言がなかった。
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