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冷たくて熱い女性は好きですか?
神埼礼子。31才。経理部主任が眉間にシワを寄せて俺を呼ぶ。
「ねぇ宮根くん。ちょっとこっちにいらっしゃい」
その声は限りなく低く、とても怒っていることが分かる。
「私、いつも言っているわよね? 分からないことがあったら、ちゃんと前もって聞くようにって。それなのに──」
今日も始まる新人イビリ。まだ大学を出たての俺は眼の前にいる上司にバレないように小さく溜息をつくのだった。
・・・
そして仕事が終わり同僚たちと飲みに行く。
「ようよう。今日も雪の女王様に叱られたんだって?」
同僚が面白い”おもちゃ”を見つけたように目を輝かせて話し始めた。俺は口を歪ませて答える。
「あぁ。ほんと参るぜ。毎日毎日新人イビリしやがってよぉ」
俺は注文したばかりの生ビールを一気に喉の奥へと押し流す。同僚はその様子を面白そうに眺めながら唐揚げを口に放り込み咀嚼してから口を開いた。
「あっそうだ。知ってっか? あの女王様。なんでも最近、男ができたらしいぜ?」
俺は「へぇ。物好きな男がいるんだな」と答えた。同僚たちが「まったくだぜ」と口を揃えて、それぞれが思い思いに彼女の文句を口にする。俺はその様子をぼんやりと眺めていた。
・・・
「ただいまぁ」
俺が部屋に帰宅すると、そこには神埼礼子がエプロン姿で出迎える。
「おかえりぃ」
そう言って明るい笑顔を見せる礼子に俺は問答無用で抱きつく。
「会社ではよくもやってくれたな!」
そう言ってキスをしまくる。口だけじゃない。首にも耳にも顔にもだ。彼女がキスから逃げるように俺の胸に顔を埋めた。
「ごめんね。でも、それもこれもあなたの成長のためを思って……」
「そんな可愛いことを言う口は閉じてやる!」
そう言って、強引に彼女の口にキスをすると彼女が溶け出した。それはもうデロデロだ。甘える仕草を見せた彼女を、そのままベッドへと連れ込む。
職場では氷のように冷たい女から、家では熱い女へと変わる。
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