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 夏の午後の強い日が差し込む放課後の図書室。クーラーの効いた、人がまばらで静かな室内は私にとって至福の場所だ。  こんな幸福があっていいのだろうか。  いや、ない。私は断言する。  そうして一度それた意識を再度、本へと向ける。  私が今、読んでいるのは山田正紀さん著のSF小説でタイトルは『神狩り』。内容を端的に言うなら、人類の営みの影に存在する高次な『神』を狩るという壮大な物語だ。  あまり感想を述べるとネタバレしちゃうから話さないけど、面白かったのでおススメだ。  まぁ合う合わないはあると思うけど。  さて、本の紹介より自分の紹介をしようと思う。私は夕海(ゆうみ)高校一年の霧島澪(きりしまみお)。  今年十六になったばかりの女子高生だ。そんな私の趣味は読書で、とりわけSF小説や科学雑誌を愛読する空想好きな半理系女子だ。  私のSFとの出会いは、今から遡ること五年前。十一歳の時に図書館でたまたま手に取った本が始まりだ。  フィリップ・K・ディック著の『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?』という本だ。  タイトルを見て興味を持ったのだ。最初に思ったのが、アンドロイドが夢を見るのかどうかはプログラムした人次第じゃないの? という疑問からだった。  まぁ実際には、本を読めばわかるがアンドロイドに心。ひいては魂はあるのか? という、かなり哲学的な内容ですごく考えさせられる作品なのだが。  なんにせよ、その本のタイトルが衝撃的だったのを覚えている。  それから私のSF行脚が始まったのだ。  当然SFの父とされるジュール・ヴェルヌやH・G・ウェルズも読んだ。  それぞれが同じように月旅行をテーマに作品を書いているが、その月へ向かう方法が、まったく違うアプローチをされていて比較して面白かった。って、また本の紹介になってる。  私の紹介だね。あはは。ついつい話がそれてしまうね。  えっとどこまで話したっけ? そうそう私がSFにハマるきっかけまで話したね。  えっとそれで最近ではゲームにまで手を出しているよ。  最近やったのは『Detroit: Become Human』という作品だ。アンドロイド物だね。アンドロイドは単なる「便利な機械」なのか? それとも、生きているのか? というのがテーマだ。  さっき話した『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とも被るけどね。  やはり、このゲームも良かった。泣いた。ぜひやって欲しいゲームだ。  他にも少し遡って『Life is Strange』というゲームも紹介したい。  タイムリープ物だ。カオス理論の一つ『バタフライ効果』("一匹の蝶の羽ばたきが、遠くで竜巻を引き起こすか?")をテーマとしている作品だ。これもやはり泣ける作品となっている。  ……って、ごめん。  また話が逸れた。  私の紹介だったね。でもまぁいっか。大体わかったでしょ?  これが私だ。  SF大好きなんだ。  他にも当然、映画も見るからおススメはあるけど、話し始めたら止まらないからまた今度ね。  そんなわけで、自分語りをしていたら図書室が閉まる時刻だ。  とりあえず今日は、この『神狩り』の続編『神狩り2 リッパー』を借りて帰ろう。  私はそのままカードに名前を記入して図書室を出た。  図書室を出た私は、その足でそのまま自転車置き場まで移動。  いつものように校庭からは運動部の掛け声が響いている。  校舎の方からは吹奏楽部の管楽器の音が聞こえるだけの空間。  校舎は夕日のオレンジ色に照らされて輝いている。  私は思わず、ほぅと息を漏らす。大好きな時間がそろそろ終わりを迎えるからだ。 「さて、帰りますか!」  こうして私の一日は終わる……かに思われた。
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