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「僕は…………いや、だめだ。何事も……ええと、知らぬが仏というだろう。猫は軽率かもしれないけど、人見知りなんだよ。
でも、僕がもっと賢かったら、また違ったかもしれないな」
私は猫をつかんで、ぎゅっと抱きしめた。
「どうして……みんないなくなるの?」
はぁ、と猫は小さい口でため息をついた。
「僕もわからないさ、理由なんて。今日は帰ってこれた。でも、奇跡は一度きりって、いつも母さんが言ってた……よね」
腕の中からするりと抜け出すと、猫は、最後に矢車菊の花冠をかぶせてくれた。
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