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「ただいま」
朝、気がつくと後ろに翔太が立っていた。
ただいま?
「え、寝ぼけてる? ここ学校だよ」
「ううん。寝ぼけてないよ。ちなみ。ただいま」
背中から腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくる。
「や、やめてよ」
びっくりして振りほどいた。
「あー、ちなみだ。会いたかったぁ」
翔太は心からそう言っているようだった。
「「ただいま」なの。「ただいま」で、合ってるの。だって僕、今さっきまで未来にいたんだから」
「ミライ?」
「うん。未来。帰ってこれてよかった」
視聴覚室の教卓の内側。そこに、未来への入り口があるらしい。
「いつ見つけたの?」
「世界史の授業のあと。この場合、「昨日」ということになるのかな。僕にとっては一年前の話だけど」
「昨日」が、「一年前」?
そう聞くと、まるで時間移動をしたかのようだけど、おかしいな。昨日もいた気がするのに。違うクラスだし昨日は会わなかったかもしれないけれど、てっきり翔太はいるものと思っていた。いつも通り、食べて寝てゲームして。
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