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さすがに突っ込ませていただいた。芝居が長すぎるでしょ。
でも、ちょっと待って。
これは「フリ」でもなんでもないってこと?
私何ももらえないんですか?
中に指輪が隠されていて、「結婚しよ!」とか、言ってくれると思っていたのに。
「そんな。なんでだ」
「なんでだって、さあ」
思考にふける翔太にさらに置いてけぼりを食らわされそうになっていたので、私は強めの口調で翔太に訴えた。
「夢でも見てたんじゃないの? 未来なんか行けるわけないでしょ」
「そんなはずは。だって、僕は、未来で、一年も……」
「夢にしてははっきりしてるんだね〜。あ、私もあるよでも。ひと晩でフランスまで行ってオリンピック観てたつもりが、起きてみたらテレビつけっぱなしで、テレビの中でオリンピックやってました〜。ちゃんちゃん! みたいな? あるよ、あるある。翔太、やっぱ寝ぼけてんじゃない? ちゃんと寝なきゃだめだぞ!」
腕をぐいっと組んで出ていく。翔太を視聴覚室から、何もない教卓から引きはがすように。幸いチャイムも鳴ったので、急がなければならなかった。
でも。
夢だとしても、少し怖かったな。
とは思った。
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