スキップ・アンド・リプレイ

6/18
前へ
/18ページ
次へ
「ただいま」  朝、気がつくと後ろに翔太が立っていた。 「え、寝ぼけてる? ここ学校だよ」 「うん、分かってる」  背中から腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくる。 「や、やめてよ」  びっくりして振りほどいた。  翔太は少し目を開いて、ふふふ、と意味深な笑みを浮かべた。 「二回目だ」 「……は?」 「ううん、こっちの話。ちなみ、ちょっと一緒に来てくれる? 試したいことがあるんだ」  そう言うなりきびすを返して、翔太はまっすぐに歩いていった。  なになに? 朝から急に抱きしめてきたり、何のつもりなんだろう?  向かった先は、視聴覚室だった。 「え、何なの? 朝から」 「こっちこっち」  ほほえんだまま、翔太はまっすぐに歩いていく。そして、教卓の前で足を止めた。 「翔太」 「ちなみ。何も聞かずに、この中に手を入れてみて」 「え……」 「ここ。教卓の下の引き出し」  私は翔太と、翔太の指さす先の教卓の内部とを見比べた。 「何も聞いちゃだめなの?」 「うん。何も聞いちゃだめ」 「ええ……」  唐突すぎる。急に用もなく視聴覚室まで連れてきて、教卓の中に手をつっこめとは。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加