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何なんだよ、見え見えのドッキリのくせに。
でもかわいい翔太のためだ。私は演技を続けることにした。
「本当に、何もない? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。あ、じゃあ、手をつないでいてあげる。これなら怖くないだろ」
「え、そう……?」
正直、そこまでは怖くなかったけど、言う通りにした。ぎゅっと手を握り合い、つないでいない方の手を、手の甲を上にしてゆっくりと伸ばしていく。
教卓の下の暗闇を手は泳いでいって。
すううう。
とん。
と、奥の板に中指の先が当たった。
「えっ……何もないよ?」
振り返ると、翔太は教卓の奥、私の手の先を見透かそうとするかのようにじっと黙っていた。
そして、
「そうか。分かった」
と、つぶやいた。
「何かコツがあるんだな」
「な、何。どういうこと」
「いや、ありがとう」
そして、翔太はふっと握っていた手を離した。
私は思わず「あっ」と言ってしまった。離してはいけないものを離してしまったような気がしたのだ。なぜか。
「お礼に何かおごるよ。今日一緒に帰ろ」
「えっ、いいの。やった〜」
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