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ぴしゃっとドアを閉めて、視聴覚室を出ていく。チャイムが鳴っていた。急がなくては。
「ねぇ、さっきの何だったの?」
ドッキリにしては不発だったぞ。と半分笑いながらそう聞いたら、
「ちなみと二人になりたかっただけ」
と、言われた。
はぐらかされたような気もしたけど、ちょっとうれしかった。
翔太が姿を消したのは、それからしばらくしてからのことだった。
さまざまな噂が流れた。家出だとか、犯罪組織、それから自死の可能性まで。どれも翔太にはふさわしくない噂だった。私が知る翔太には。
翔太は、日々のゲームのデイリーボーナスのことしか頭にないやつだ。いつも目の前のものごとをがんばり、愛す、そういうやつだ。後ろを振り返り、怒り嘆くような、自暴自棄になってしまうような、そういう人ではない。
最後にくれたライン。
「また会おう!」
と並べられた、その言葉を、私は信じている。深い意味とか信じたくないけど、とにかく、会えないと決まったわけではないのだと。ばかかな、私。
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