集めた時に浮かんだ顔は

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 今から2年前。元号が平成に変わって間もない年の、夏の終わり。  ソフトテニスで県大会の常連として名の通る中学校の1年生だった私と由紀乃は、パコンと小気味よい音が響くコートで、来る日も来る日もテニスの軟式球をひたすら拾い集める日々を送っていた。  4月には、一緒に入部した新入生が10人以上いた。だけど評判通りの厳しい練習について行けなくなった仲間がひとり、またひとりと辞めて行き、夏休みが終わるには私たち2人だけになってしまった。夏休み前の大会を最後に3年生が引退したので、先輩も2年生の8人だけ。  球拾いは1年生の仕事というのが相場だ。練習の準備や後片付け、コート整備も1年生の役割。きっと全国どこの学校でも、どの部活でも、大体そういうものだろう。  それでも今は、少しずつ先輩と同じ練習をさせてもらえるようになったからまだいい。3年生がいた頃は、たまにサーブのトス練習や、コートの隣にある体育館に向かって壁打ち練習を許されていたくらいだ。コートでボールを打たせてもらえたのは数える程度しかなかった。  校内のどの部よりも、女子ソフトテニス部の練習はキツいことで有名だった。  さらに、部活特有の謎ルールがあった。
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