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目が悪い家系だったし、小学生の頃から眼鏡だった。 何故かあの人が私に選ぶ眼鏡は、ザ・眼鏡、といった垢抜けないモノばかりだった。 私がこれが可愛い、と指さしたデザインを一瞥して、何ごともなかったように自分が選んだものに決めていた。 学校で苛められるときには、キモ眼鏡、と呼ばれた。 友達にはまじまじと、もう少しカワイイ眼鏡にしたら?と本気で言われ、やっぱりそう思うよね、とあの人に話すと どんだけお金かかってると思ってんの!子どものクセに、イヤラシイ! と狂ったように怒り散らした。 高校生の時に、眼鏡の歪みを調整してもらいにお店に行き、何時もよりも遅く戻ったことがある。 玄関には、鍵がかかっていた。 鍵を持っていなかったことは知っていたはずだった。 チャイムを押すと玄関が開き、仁王立ちのあの人がいた。 こんな時間まで何していた? 眼鏡を直しに行って… 言葉の途中で、顔面に掌底が飛んだ。 嘘つけ!ご飯食べなくて良い! 玄関の土間には、直したばかりの眼鏡が歪んで転がっていた。
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