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10 運命の一冊
礼拝の参列者は八割を超え、ヨハン牧師も嬉しそうだった。
「アンゼルムくん、よくやりましたね。人々の評価は上々ですよ! 今後もこの教会の参列者は増えることでしょう」
アンゼルムはヨハン牧師の言葉に嬉しそうに頷いた。
その様子を、カルロとフィオレが嬉しそうに眺めている。
アンゼルムは二人に歩み寄ると、力強く抱きしめ、フィオレを赤面させた。
「成功は、君たちのおかげだよ。本当にありがとう」
アンゼルムが頭を下げると、カルロはアンゼルムの顔を上げさせた。
「礼ならフィオレに言ってくれ。俺はフィオレに引きづられて手伝っただけだからな。そして、なんならこの先もフィオレのことを頼むよ」
カルロの言葉にキョトンとするアンゼルムと余計な事をいう兄に向けて怒り顔のフィオレ。
「アンゼルム、君がフィオレを憎からず思っていることは今の抱擁でわかったよ。プロテスタントの牧師は結婚できるのだろう? ならば教会音楽家も結婚できると言うことだな」
ニヤけるカルロに、怒っているフィオレ。
そして、驚きと照れで赤くなるアンゼルム。
三人は自分たちが作った讃美歌集が、人々を教会に導く役割を果たせた事を、誇りに思った。
日曜日毎に、人々は讃美歌集を持って教会に集まり、母国語で神を賛美する事だろう。
これからも。
永遠に。
〈了〉
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