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4 新しい仲間
「神の下では皆平等なんだ。金持ちだけが、教会が発行する免罪符を買って、罪を免れる。そんな馬鹿な話はないだろう? 君たちがここに来たのは、良い選択だった」
アンゼルムはカルロとフィオレに話す。
そして、今度は自分の話しを二人に話し始めた。
「へぇ。じゃあアンゼルムさんが俺たちに声を掛けたのって、讃美歌を人々に教えるためですか?」
カルロがそう言いながらフィオレを伺う。
フィオレは口を引き結んだ。
「そんな重大なこと、私たちにできるのかしら? 私たち、神学も勉強していないのに……」
心配そうなフィオレに、アンゼルムが微笑んだ。
「そんな旧態依然としたことを言わないでくれ。神を讃える歌は、皆の物なのだから。神を讃える気持ちがあればいいんだよ」
アンゼルムの言葉に、フィオレとカルロは顔を見合わせた。
少しの間向かい合った二人は、背筋を正してアンゼルムに答えた。
「俺たちで良ければ、あなたとやりましょう」
アンゼルムは胸が熱くなり、立ち上がってカルロを抱きしめ、肩を叩いた。
カルロは目を丸くし、笑いながら答えた。
「教会関係者にも、こんな情熱的な方がいるんですね。もっと冷静な方々なのかと思った」
「冷静な方々なら、宗教改革や紛争など起こらないと思うがね」
アンゼルムの言葉に、二人が吹き出した。
「違いない」
音楽仲間を失ったアンゼルムは、新しい仲間を得ることができた。
やらなければならないことは山積みだったが、不思議と疲れは感じなかった。
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