8 アンゼルムの命運とフィオレの想い

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8 アンゼルムの命運とフィオレの想い

「そんな……。失敗したらアンゼルムさんが解雇なんて……」  アンゼルムの話にフィオレが震える。  カルロは都市部の印刷会社に仕上がった歌集を引き取りに行っている。  礼拝参列者のための歌集がもうすぐ、出来上がるのだ。  フィオレとカルロがいて、歌集があれば。    アンゼルムは自分の進退は気にしていなかったし、教会の行く末も心配してはいなかった。  例え自分がこの教会を解雇されたとしても、歌集とカルロとフィオレが居れば大丈夫だ。 「忘れないでくださいね。兄と私がこの仕事を引き受けたのは、アンゼルムさんだったからです。私たちは同志なのでしょう? 失敗してこの教会を去ることになったとしても。アンゼルムさんが行くところに私たちはついていきますから」  真っ直ぐなフィオレの視線を受けて、アンゼルムは僅かに赤くなった。 「そんな事を言うものではないよ、フィオレ。君たちには感謝してもしきれない。この教会は君たちが居てこそ、成り立つのだから。もう少し力を貸しておくれ」  自分が追い出されるかも知れないのに、教会のために一生懸命働こうとしているアンゼルムを見て、フィオレは必ず、日曜日の礼拝を満席にしてみせようと決意した。  アンゼルムは、私たちを見出してくれた。  アンゼルムは、私たちを常に励ましてくれた。  アンゼルムは、私たちを心の底から信頼してくれている。  アンゼルムについて考えると、アンゼルムへの想いが増していく。  フィオレは、それがなぜなのかは分からずに、ただ、アンゼルムをガッカリさせたくない、と強く思うのだった。    
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