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「もう安心してください。オレがここから出してあげますから」
オレは女性の手を掴んだまま玄関に向かって進んだ。しかし女性はオレの手を振り解いた。
「ちょっと。やめてください」
「どうしたんですか? 今なら犯人はいませんから。ほら、早く」
オレはもう一度女性の手を掴み、少し強引に引っ張った。
「だからどういうつもりですか? あなた【ただいま】のお客さんですよね? ちゃんとルールは守ってください」
「確かに【ただいま】の客です。でも、今はあなたを助ける為にここに来ました。あなた、行方不明になっている高校生の松倉ユナさんですよね?」
オレがそう言うと女性は自分の顔を覆っていた黒い布を自ら乱暴に剥ぎ取った。
「バカじゃないの? そんな訳ないでしょう!」
女性の顔は初めて見る顔だった。
「あ、あれ」
まずい、完全に間違えた。
この女性は行方不明の高校生ではない。
ここはいつものシミュレーションの場だ。
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