深夜26時、逢瀬を重ねる

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もし本当に彼が”そっち系の人”だったとして、私が担当する際に余計なボロを出したりしてしまったら…新次郎さんに迷惑がかかる。 そんな気がしていたので、自分も極力関わらないようにしていたのだ。 大体…本当にヤバい人がこんな普通の病院で入院するものなのか些か疑問ではあるが、そっち系の人の都合など私が考えて分かるようなことではない。 コンコン…っと205号室のドアをノックして、失礼させてもらう。何を言ったって仕事は仕事。割り切って業務に当たれば、きっと何も起こることなく時期が来れば彼は退院していくことだろう。 「失礼します……多岐川さん、具合どうですか?シフトの都合でこれより担当させて頂くことになりました、長谷川です。よろしくお願いします」 昼過ぎ、挨拶に伺うと…手がつけられていない食事が未だ机の上に置かれたままだった。 「お前はいつまで続くだろうな…俺の世話係」 こちらに視線を寄越した後、スープの食器に手をかけた多岐川さん。その様子をじっと見つめていた私に一瞬、微笑みかけたかと思うと…… 次の瞬間、それを私の顔面に思い切り投げつけては…悪びれる様子もなく他の食器を全て床に投げ捨てていくというサイコぶりを発揮して見せた。 ………なんだ、この問題児は。
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