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「悪いな、起こして…お前今日は夜勤だよな?ちゃんと昼まで寝溜めしてから行けよ」
まだ6時前なのに…こんなに早くからここを出て貴方は一体何をしているの?
っと、聞く勇気なんてもちろんない。それでもせっかく顔を合わせたのだから少しでも近くに居たくて扉に背を預けて立っている彼の元まで向かった。
「んだよ、今日は甘えたい気分?ノーブラにパジャマ姿で近寄ってくるとか、お前俺の事誘ってんな?」
ふに、っと頬を抓られて顔を歪めると…それを見て楽しそうに笑った新次郎さん。
「生憎、俺は今忙しいから…誘いに乗ってやることはデキねぇけど。いい子で待ってたら、ちゃんと帰ってきてやるから…大人しく寝てろ」
頭に手を乗せてそう言われると、待つと言うより他…無くなってしまう。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
一瞬、切なげな表情を見せたのが気になったが…そのまま背を向けて玄関まで歩いていってしまう彼の後ろ姿をただ黙って見送った。
──…しかし、、
「…っ、新次郎さん!!」
「ん?何だよ急に、大声出して…どーした?」
玄関で革靴を履いていた彼の背中をボーッと眺めていた私。一瞬彼が屈んだ時に首元に見えたのは彼の身体に唯一刻まれている刺青。
【XXVI】
ローマ数字で26を意味するソレ。
26でツム…って。
紬葵って意味だって…そう言ってくれていた。その刺青のすぐ隣に─…
濃い紅色の痕がついているのが視界に入り、身体が震えた。
…それ、私が付けたものじゃないですよね?
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