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五つ星レストランでのディナー、夜景が綺麗なホテルのスウィートルーム。そして目の前には、薔薇の花束を持った、とてつもなく容姿の整ったイケメン。
「朔、誕生日おめでとう」
そう言って、そのイケメン――もとい三波朔の幼馴染であり恋人でもある木元侑星は微笑んだ。
見つめる瞳、声音、表情、侑星のすべてが朔への愛しさに満ちていて。甘さに脳がくらりと揺れた。
(え? 僕……もしかして今日侑星にプロポーズされる⁉)
あまりに条件が揃いすぎたこの状況に、朔ははちきれんばかりにドキドキと胸を高鳴らせた。
俺様幼馴染はどうやら僕を一生かけて愛したいみたいだ
「朔の誕生日、レストラン予約したから」
「えぇ……」
ことの発端は数週間前、そんな侑星の一言から始まった。季節は秋、侑星と朔が一緒に暮らし始めて二年が経っていた。
「どうしたの急に?」
去年購入したソファーに座り、後ろから抱きしめる侑星の体を、背もたれ代わりに、テレビを見ていた朔は驚いた声を上げた。
朔の予定を聞かずに勝手に予約……なんてことにはまったく驚いていない。幼馴染である侑星とは、お互いの誕生日を物心ついたころから毎年一緒に過ごしている。小さい頃は家族ぐるみで、学生時代は二人でテーマパークに行ったりした。大人になってからの数年は、一人暮らしを始めたこともあって、お互いの家でまったりと過ごすことが多かった。付き合いだして分かったことだが、ここ数年誕生日にお家デートが多かったのは「気兼ねなく朔に思いっきり触れるから」という侑星の下心が働いていたらしい。
なので、今年の誕生日も当然、侑星と過ごすつもりで、予定は開けているが。
こんな風に、あらかじめどこに行くと言われたのは初めてだった。
(しかもレストランを予約……?)
朔はますます首を傾げた。首を傾ける朔の可愛らしい仕草に頬をニヤつかせ、侑星は朔の左手を取った。
そして意味ありげに、薬指に触れると指先で根元を撫でる。
「さっっいこうに、思い出に残る誕生日にするから」
そう言って、侑星は撫でた場所にチュッと口付けた。
「……………………」
侑星がキスをしたのは朔の左手の薬指。あらかじめ告げられた当日の予定。そして最高の思い出にするという侑星の言葉。
それから考えられることなんて、一つしかなくて。
(え……これってまさか……)
頭に浮かんだことに、ドキンと鼓動が跳ねる。
「楽しみにしてろよ」
分かりやすく赤くなる朔を、侑星は嬉しそうに抱きしめた。
そしてあっという間に、誕生日はやってきた。
(き、緊張する……)
侑星が運転する車の助手席に座り、朔はシートベルトを意味もなくギュッと握りしめていた。先日、誕生日の予定を告げられてから、朔は今日までそわそわしながら過ごしていた。
(わざわざ宣言するってことは……プロポーズだよな……いや僕の考えすぎかな……いやでも……)
というのを、心の中で繰り返しているうちに時は過ぎ、何の心の準備もできないまま当日を迎えた。
(まあ、準備って言ったって答えはイエスしかないんだけど……)
浮かんだ心の声に、勝手に一人で赤くなる。すると横から、フッという笑い声が聞こえた。
「真顔になったり、赤くなったり、朔可愛すぎ」
「だって……」
付き合いが長い分、朔の考えていることなんて、侑星にはお見通しだ。手が伸びてきたと思ったら、親指でふにふにと頬を撫でられた。上機嫌です! というのを隠しもせず、侑星はにこにこと笑顔になった。
「ドキドキしてるの伝わってくる。嬉しい」
「っ……」
男前な顔をこれでもかというようにデレッとニヤケさせる侑星に、朔の中で予感が確信に変わる。
朔の考えが侑星にはお見通しのように、侑星の考えていることだって朔にはまる分かりなのだ。
「もお……僕の反応見ておもしろがってるだろ!」
「朔が可愛すぎるからだって……あーもーやばい……かわいい」
拗ねるように唇を尖らせ、全然痛くない強さで侑星の肩を小突く朔に、侑星のデレデレは一向に収まることはなかった。
「……ここは?」
連れてこられた店の看板を朔は見上げる。そこは有名な紳士服のテーラーだった。侑星は朔の手を握り迷わず中に入っていく。すると侑星に気付いた店員だろう男性が二人を個室に通してくれた。
「この度はおめでとうございます。ごゆっくりどうぞ」
意味ありげにそう言うと、男性は部屋から出て行った。朔は慌てて頭を下げる。
(え……今おめでとうございますって言った?)
さも今日二人に何があるか分かっているような口ぶりに慌てていると、侑星にちょいちょいと手招きされる。
「じゃーん!」
効果音のような言葉を口にして、侑星は目の前にあった布を引いた。中には一着のスーツを着たマネキンが立っていた。
見るからに上質な品物だと分かる紺色のスーツ。素敵なその仕上がりに思わず見とれる。そんな朔に侑星が笑みを深めた。
「この日のためにオーダーメイドした。朔用のスーツ」
「オーダーメイド⁉」
驚く朔に侑星がかっこよくウインクを決める。
「そんなっ……わざわざそこまでしなくても……」
気障な仕草も侑星がすれば様になる。朔は胸をときめかせた。
「そりゃ俺はオシャレ朔でも、プレーン朔でも、朔ならなんでも大好きで大好物だから、どんな服装でもいいけど。今日は……せっかくの記念だからさ」
はにかむように侑星が微笑む。
(プレーンな僕って何⁉ ていうか……記念……? これからこの日が記念日になるってこと⁉)
もはやどこからつっこめばいいか分からない。だけど侑星は相変わらずとても機嫌が良さそうで。楽しそうな侑星を見ていると、自然と朔の顔にも笑顔が浮かぶ。目が合うと、その瞳が優しく細められた。愛し気に朔を見つめる侑星にカァァァーと顔が赤くなる。
「き、着替えてくるから……」
「うん、ゆっくりでいいからな」
かけられる声も優しくて。
赤くなった顔を見られないよう、朔は慌てて試着室に駆け込んだ。
「このスーツサイズぴったりなんだけど……」
案内されたレストランの席に座り、朔がそう言うと侑星は自慢げに鼻を鳴らした。
「当たり前だ、俺を誰だと思ってる。朔の身長体重、スリーサイズ、趣味嗜好。その他全部、完璧に把握してるに決まってるだろ」
「ああ……そう」
ドヤ顔でそう言われ、朔は頷くしかない。すると侑星が朔に顔を寄せた。
「もちろん指輪のサイズも」
「っ……」
声を潜め囁かれた言葉に、朔は鼓動を跳ねさせる。赤くなった朔の頬に、侑星は満足そうに笑うと、メニューに手を伸ばした。
(ああ……もうドキドキして心臓持たない~~)
朝からずっと、正確にはここ数週間ドキドキしっぱなしの心臓を、どうにか落ち着かせるように、朔はふうと大きく息を吐いた。
ちらと目の前の侑星に視線を向ける。メニューに視線を走らせる伏し目がちな瞳。朔だけじゃなく自分にも用意していた上質なスーツを、そのスタイルの良さで完璧に着こなす侑星は、とてもとても素敵だった。
(侑星……やっぱりかっこいい……)
朔はポーッと見とれる。自分だけではない、さっきからフロアにいる全員が、チラチラと侑星を盗み見ていた。
(こんな素敵な人が……僕の恋人なんだ……)
そう思っていると、顔を上げた侑星と目が合った。侑星は朔を見つめ蕩けるような笑顔を向ける。それはまるで、朔のことしか目に入っていない。そう告げているようで。
「っ……」
じわじわと胸が熱くなる。熱さが全身を包み込んで、朔も侑星のことしか目に入らなくなった。
「朔の好きそうなやつ、適当に頼んでいい?」
「うん、ありがと」
愛し気な視線に笑顔を返して、朔はうんと頷いた。
「今日は特別なプレゼントがあるんだ」
前菜が運ばれてきたところで、ふいに侑星がそう言った。
(き、きたっ……!)
侑星の言葉に、朔は体を身構えさせた。
そのタイミングを見計らったように、店員が何かを運んできた。それはワインだった。
「朔が生まれた年のワイン」
「僕が生まれた年?」
というか、それは侑星が生まれた年でもあるが。
「朔、誕生日おめでとう」
カチンとグラスを重ね合わせる。運のいいことに明日が休みだったので、侑星はこのままホテルに泊まれるように部屋を取ってくれているらしい。
「お前酒弱いから、ちょっとだけな。残りは記念に持って帰ろ」
「う、うん……」
グラスに口をつける朔の頬を慈しむように撫でると、侑星もワインに口を付けた。
朔は体に入った力を抜く。
(いや……前菜のタイミングでプロポーズはさすがにないよね)
どれだけ自分は意識してるんだ、と朔は一人で恥ずかしくなった。
だが、その後も。
「朔、誕生日おめでとう」
(ついに……!)
朔は身構える。だが、出てきたのは、箱にリボンをかけられた某メーカーの有名なゲーム機だった。
「スウ〇ッチ欲しいって言ってたろ。一緒にしような」
「ありがとう」
前から欲しいと言っていたゲーム機をプレゼントとして渡され、覚えてくれてたんだ……と胸がジーンとなった。
(まあ……まだ食事の途中だし)
朔は大きな箱を受け取り、心の中でうんうんと頷いた。
楽しく食事は進み、そろそろデザートかなという時。パッと店内の照明が消えた。
「っ……」
そしてフロアに、生演奏でハッピーバースデーが流れ出す。
(これは…………‼)
食事も終わった。流れている曲はハッピーバースデー。本日誕生日な朔。タイミングはばっちりだろう。
(今度こそ!)
朔の胸は、期待に溢れだす。
「さく~~たんじょうびおめでとう~~」
「……ありがとう」
その言葉とともに、現れたのはホールケーキだった。
一瞬、あれと思うが、ケーキに立てられた朔の年齢分のロウソクと、真ん中のプレートにハッピーバースデーと一緒に、でかでかと愛してるという文字が書かれていて、そんな気持ちはすぐに吹き飛ぶ。あまりにストレートなその言葉に、頬が赤くなり嬉しさが体中に広がっていく。
「さ、どうぞ」
促されるまま、火を吹き消すと、周りから拍手が巻き起こった。目の前を見ると、愛に満ちた瞳で自分を見つめる侑星。周りの人たちも店員も微笑ましそうに自分たちを見つめていて。温かい雰囲気に、朔は幸せに包まれ笑顔になった。
(おかしい……)
ホテルのエレベーターに乗りながら、朔は首を傾げていた。食事を済ませ、二人は侑星が取ってくれた部屋に向かっていた。
(僕……プロボーズされるんじゃなかったっけ……?)
無事に食事が済んでしまった。色んなものを朔のために用意してくれた侑星の気持ちが嬉しくて、幸せですっかり忘れていたが、今日自分は侑星からプロボーズを受けるはず……だ、多分。
朔はうむむ、と考え込む。
「着いたぞ、朔」
侑星の声に朔は考え込んでいた顔を上げた。そして目に入った数字に驚いた声を上げた。
「え……最上階⁉」
「ほら……」
朔の反応に嬉し気に頬を緩め、侑星が朔の腰を抱く。促されるまま部屋まで案内された。
「うわぁ……」
部屋に入り、目の前に広がった光景に朔は歓声を上げた。
部屋の豪華さもさることながら、大きなガラス窓の外にはイルミネーションが鮮やかな夜景が広がっていた。
「気に入ってくれた?」
後ろから抱きしめられ、髪にチュッと口付けられる。豪華な部屋には、誕生日らしく色とりどりのバルーンや飾りが施されていた。
「朔に喜んで欲しくて張り切っちゃった」
「これ……侑星が?」
抱きしめる腕を握りしめ、侑星の方に顔を向けると、ふふと侑星がはにかむ。
「う~~ゆうせぇ……」
まさかここまでしてくれるなんて。侑星は言わないが、ここは絶対スウィートルームだ。飾りつけもよく見れば、朔が好きな色を中心に配色されている。
本当にこの幼馴染は、何でここまでしてくれるんだろう。
その答えは、すぐにその口から告げられる。
「これで終わりじゃないからな」
そう言って、侑星は朔の前に何かを差し出す。それは真っ赤に咲くとても綺麗な綺麗な、薔薇の花束だった。
「愛してる朔、生まれてきてくれてありがとう」
「っ……侑星っ……」
真っ直ぐに向けられる愛し気な視線と愛の言葉に、堪らず朔は侑星に抱きついた。
「僕も好き……好きっ……侑星が大好き……愛してる! めちゃくちゃ嬉しい! 全部、全部嬉しいっ‼ ありがとぉ……」
侑星からの大きな愛情に、朔の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。朔の全身がその愛情に包まれて、震えるほどの幸せに襲われる。朔は涙交じりの声で、何度も好き好きと繰り返した。
必死に侑星にしがみつく朔の体を、侑星はまるで宝物に触れるように、大事に大切に抱きしめてくれる。
「あ……薔薇の花……せっかく侑星がくれたのに潰れちゃう……」
「ん……じゃあ、こっちによけとこっか」
しゃくりあげながら、大事そうに花束に触れる朔に瞳を蕩けさせ、侑星はそっと花束をテーブルの上に置いた。
「朔……」
「あっ……」
侑星の声が低くなる。耳元で甘く色香を含んだ声音で名前を呼ばれ、体の芯にあっという間に熱が点った。
「朔……朔っ……さく……」
何度も名前を囁かれ、顔中にキスの雨が降ってくる。
「んっ……」
唇が重なったのと同時に、頭を抱えられベッドに押し倒された。
「んんっ……ん、っ……んぁ……」
すぐにキスが深くなる。口内を舐められ、敏感な上顎をくすぐられた。堪らず朔の口からくぐもった甘い声が漏れる。
「好き……大好き朔……愛してる」
熱のこもった声で、愛を囁きながら侑星は朔の服を脱がせた。露になった白い肌にもキスの雨を降らせて、侑星は赤い所有の証を刻んでいく。与えられる甘い愛撫の一つ一つに朔は敏感に反応した。
「ああ……ゆうせい……」
「堪んない……朔……かわいい」
自分の与える手管すべてに、従順に反応する朔に、侑星は湧き上がる欲望を堪えるように端正な顔を歪めた。
「侑星の好きにしていいからっ……」
我慢なんてしなくていい。いつも優しい侑星。朔はもう侑星に与えられるものなら何だって嬉しい。
「僕の欲しいものは……いつだってゆうちゃんだけだから……」
暗に、侑星になら何をされてもいい、という想いをこめ、そっと頬に触れる。するとそれが伝わったのか、侑星の瞳が完全に欲情した雄の目に変わる。
真っ直ぐに、朔が欲しいという男の顔を向けられ、それだけでイってしまいそうになるほど、くらくらとした快感に襲われた。
「俺の欲しいものも、いつだって朔だけだ……」
「んんっ――――」
吐息交じりに耳元で囁かれ、体を駆け上がる震えを、手の甲を口に当てて堪える。その快感が収まらないうちに、侑星の手が朔の昂ぶりに触れた。そしてそのまま上下に手を動かす。
「あ……ダメッ……」
「うん、イって」
侑星からの愛と、甘いキスですでに硬くなっていたそこは、少し刺激されるだけで限界を訴える。促すように、侑星がさらに激しく朔自身を擦り上げた。
「あ、あっ、んぅ……あ、んんっ――――」
あっという間に朔は一度目の精を放ってしまう。
だけど、こんなのじゃ足りなくて、もっと熱くて激しい侑星の熱で体の奥から愛されたいと心が訴える。
「ゆうちゃっ……」
「ん……俺も早く朔んナカ入りたい……」
呼んだだけで朔の欲しいものに気付いた侑星が、朔が放った白濁を潤滑剤にし後ろに指を忍ばせる。
「朔のここ……もうとろとろになってる」
「あんっ……だって早くゆうちゃんが欲しくて……」
ナカの感じるところを刺激され、甘い声を零しながら侑星を強請る。侑星は堪らないと言うように、熱く吐息を吐いた。
「すぐにやるから……」
侑星は前を寛げ、昂ぶりきった自身を取り出した。そして朔の後孔に宛がうと、一気に貫いた。
「っ……あ、あんっ……ゆうちゃぁ……ん!」
硬く大きな侑星のソレが感じるところをなぞり上げる。体を襲う快感に朔は堪らず背中をのけぞらせた。
「っ……朔っ……」
腰を揺さぶりながら、侑星は朔の両手に指を絡め握りしめる。
「朔……さく……俺の大好きでっ……何よりも一番大切な……さく」
心のこもった愛の言葉に瞳が潤む。その間も激しく愛されて、全身が快感と幸せに満たされ溶けていきそうだ。朔は強く侑星の手を握り返した。
「あっあっ、ゆうちゃん……僕……もうっ……!」
「朔……」
限界を訴えると、侑星が朔に顔を近づけた。真っ直ぐに侑星が朔を見つめる。
そのあまりに真剣な瞳に、朔は時を忘れるように引き込まれる。
「結婚してくれ」
「っ……!」
突然の言葉に息を飲む。まるで心臓が止まったかと思った。
だけど次の瞬間、動き出した侑星に、限界まで来ていた熱が煽られる。
「朔……返事、は? っ、」
熱い息を溢しながら問いかける侑星に、侑星もまた欲望が頂点にきているのを感じた。
間近にあるその瞳には、朔だけが映っている。
視線、吐息、ナカで感じる熱い欲望、朔に向けられる侑星のすべてが、朔への優しさと愛に満ちていた。
「っ……」
心臓がぎゅっと甘く縮む。朔は侑星に抱きついた。
「うん! するぅ……ゆうちゃんと結婚する……‼」
強く侑星に抱きつくその間も、最奥を激しく穿たれる。
「さくっ……!」
呼ばれる声に顔を上げると、噛み付くようにキスされた。
「ん、んっ……んぅ――――」
瞬間、一際大きく侑星に突き上げられ、朔は欲望を弾けさせた。それと同時に朔のナカに温かい侑星の精が注ぎ込まれる。
「んふ、ん……」
その温かさに全身がとてつもない幸せに包まれる。
朔と侑星は、お互いの存在を慈しむように、ずっとキスを続けていた。
後ろから侑星に抱きしめられ、朔はずっと自分の左手の薬指を見ていた。そこには、輝かんばかりのダイヤが煌めいた結婚指輪が嵌められていた。
手を掲げ、キラキラと輝くそれに、朔は頬を綻ばせる。
「まさかあんな瞬間にプロポーズされるなんて」
朔はポッと頬を染めた。プロボーズされる予感はしていたし、いつなんだろうとずっとドキドキしていたが。まさかあんな……愛し合っている最中にされるなんて思っていなかった。
頬を赤らめる朔を侑星は胸の中に抱きしめた。
「だってああすれば朔と愛し合う度、プロポーズを思い出せるだろ? そしたらさ、毎回毎回この瞬間を思い出して、俺も朔も最高に幸せな気持ちになれる」
侑星は朔の顔を覗き込み、男前がもったいないぐらいデレ―ッと顔をニヤケさせた。
「…………」
自分だけじゃなく、当たり前のように『朔も』と言うのが、なんとも侑星らしい。
(まあ、その通りなんだけど)
とても幸せで、侑星がとても愛おしくて、朔は自分のすべてを預けるように、侑星の体に身を寄せた。ずっと甘い幸せに体が浸されているみたいだ。こんな幸せが、この世にあったなんて朔は初めて知った。
(本当に昔からずっと、侑星は僕を幸せにしてくれる……)
じわじわと目頭が熱くなり、朔の瞳から幸せな涙が零れ落ちる。
「何泣いてんだよ」
言葉とは裏腹に、侑星の声はとても優しい。その指先が、慈しむように愛おしそうに朔の涙を拭って、それがまた朔を幸せにする。
「幸せで……」
グスグスと泣きながら答えると、侑星は嬉しそうに瞳を細め、さらに強く朔を抱きしめた。
「さく……愛してる。今までもこれからも朔だけを一生愛してる」
耳元で囁かれる愛の言葉に、際限なく幸せな気持ちが広がっていく。朔はその言葉に答えるように、きつく侑星に抱きつき返した。
「これからもずっと一緒にいようね」
「おう、当たり前だ」
好き好き、大好き、愛してる。
自分を幸せにしてくれる侑星を、それ以上に幸せにしたい。
侑星が一生朔だけと言ってくれたように、朔にも一生侑星だけだ。
侑星のことを、心の底から愛してる。
今までもこれからも、ずっとずっと――――――
どうやら僕は俺様幼馴染を一生かけて愛したいみたいだ。
♡ハッピーエンド♡
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