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野望
道端凍星は、福地源一郎と共に話していた。
筧の水の音や小鳥の鳴く声が二人の耳元に響く。
「立氷姫には、坂本龍馬とジョン万次郎がいる。土佐の殿様だってああ見えて聡明なんだろ?」
「容堂殿は酔えば勤皇、覚めれば佐幕と言われたりしてましたな……」
「今の俺はあんたと違って仕える主がいねえ。自由は自由で気ままだが、退屈だ」
「浪人でも、やりたい事があればよいのですよ、道端殿」
「しっかし、福地……お前って男は」
もし、福地源一郎が現代に生まれていたなら荻原重秀のような有能な人材として、経済面でも活躍していたであろう。
令和の世から来た女子大生一ノ瀬ゆよんと古本屋の男がそう評していた。
(福地源一郎、こいつは俺と違って天下を取るとかそういう野望がねえ……)
詰まり、徳川家に対する福地の忠誠心は本物なのだ。
毛利敬親は寝床につく前に先代の毛利輝元の霊と話していた。
いよいよ、打倒徳川の時が迫ってきた、と輝元は敬親に告げる。
輝元は、豊臣政権五大老の一人であり、関ヶ原の戦いでは西軍の総大将となったことがある。
『関ヶ原の恨みを晴らせ、敬親』
『承知した。何時決起すればよいのですか?輝元公』
『徳川がこちらに刃を向けた時じゃ』
『左様でございます』
武士の世が何れ終わるかもしれませぬ。
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