戦雲

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戦雲

松はみな枝垂れて南無観是音                   種田山頭火 コロナ禍の影響で本の売れ行きが芳しくない。 最近はコンビニでも書籍や雑誌コーナーがあるので若者の活字離れはなんとかなるだろうとは俺も思う。 昨日の夜に、俺は可笑しな客人に出会った。時代劇に出てきそうな身分の高そうな殿様だ。 『160年前のコレラを防いだ方法』  殿様はその本を買いたい、と俺に申し出た。 「これを買うんですね」 『そうせい』  寡黙な殿様の後ろには束帯姿の男がいて……。  こちらを恨めしそうに見ていた。  マジでこの人達誰なんだよ……。  俺はこの人達に深入りしないようにした。 『敬親、それで例の書物は手にいれたか?』  輝元の言葉に敬親が深くうなずく。 『勿論。早く萩に帰り読みましょうぞ』 『有無』  村田清風にも読ませてやろう、と敬親は寝床につきながらそう思った。  毛利の殿様も忙しい。
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