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此処にあるは望みか
脇の下にダラダラと汗をかく福地。
この緊張感は一体なんなのだろうか?
日本髪の中年の女。
当世で言えば、彼女は美人と言えない。志村けんが女装した見た目だと思うが、男性を虜にする魅力は備えている。つまるところ、彼女は変わった感じの美人なのだ。
「条野採菊」
福地は彼女の名を呼ぶ。政治家である自分、小説家である自分。
「お前さんは本当に色んな顔があるねえ、福地殿」
「条野殿には及びますまい。それがしはただの御用記者である」
「ごよう、なんだって……?あっしは耳が悪くて。いつもお筆に聞き取りさせてんのさ」
条野は耳が悪い。その分、目は福地やお筆より良いのだ。
条野採菊という女にそれがしは惚れているのか?
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