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コヨイ
「大凡世間の事物、進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。 進まず退かずして潴滞(ちょたい)する者はあるべからざるの理なり。」
『学問のすゝめ』 福沢諭吉
氷の里を出た立氷姫の姉である初雪は、人間社会に溶け込むべく佐賀国で修行を重ねていた。佐賀藩主である鍋島直正の薬師として初雪は働いている。
佐賀国でも当時不治の病であった天然痘を根絶するために、当時佐賀藩医であった伊東玄朴が藩に痘苗の入手を進言したり、直正は名君として名が高かかった。直正が風邪を引けば、直ぐ様初雪が駆けつけ薬を調合する。
そんな初雪は直正の背後にいる守護霊の存在に気づく。
「初雪、そなたにも視えておったのか……?」
直正の問いに初雪はコクリとする。
直正の背後にいるのは佐賀藩の祖である鍋島直茂であった。
初雪も鍋島の化け猫騒動なら少しだけ直正から聞いたことがあるので知っている。
「確かに。聢と見えております。直正様」
「余の後ろにはいつも直茂公の霊が御守りくださっておる」
鍋島直茂の守護霊は家臣達にも見えているらしい。
初雪には未来を視る力も備わっているので、父親や先祖には感謝感激である。土佐藩主に嫁いだ立氷姫のことも心配でならない。
氷の精霊である初雪は、妹や吹雪に再会したいといつも心の中で願っていた。
どうか皆が無事でありますように。直正様や周りの人々も。
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