エリオット殿下とお忍びデート 1話

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「『平民っぽい服』は、どこで手に入れたのですか?」 「秘密。カリスタの分もちゃんと用意してあるからね」 「ありがとうございます」  あれ? どうしてわたくしの服のサイズを知っているのかしら……?  まさか、殿下には千厘眼が……!? 「カリスタも、王妃教育の休暇が必要だろう?」 「……そう、ですね。さすがに疲れました」 「うん、そうやって弱音を言ってくれるの、うれしい」  エリオット殿下はそっとわたくしの頬に触れた。  悪役令嬢として、きちんとイベントをしなくちゃ! ……そう、強く思っていたのよね。  ゲームのシナリオが終わったことで、ちゃんと彼のことを見ることができているのだと思う。  そして、そんなわたくしのことを、エリオット殿下は見守ってくれていたのね。  そのことに気付いて、自分が恥ずかしくなった。  好きなゲームの中に転生して、攻略対象たちに会って舞い上がっていたことに、気付いたから。  ここは『カリスタ(わたくし)』にとって――現実の世界なのだ、と。  悪役令嬢として、わたくしはダメダメだったと思うけれど……それでも、とても大事なことに気付けたの。 「エリオット殿下も、弱音を教えてくださいませね。ちゃんと聞きますから」 「……わたしはどちらかというと、こうして触れていると幸せだからなぁ」
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