エリオット殿下とお忍びデート 2話

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「服装はどうしましょうか?」 「あ、それは大丈夫。エリオット殿下が用意してくださるから……」 「まぁ。それはそれは……うふふ」  なにか含みがあるように微笑まれ、首を傾げる。  エリノーラは耳元でこうささやいた。 「男性が意中の相手に服を贈る意味は……」 「え、えええっ?」 「うふふ、お嬢さまも殿下もお年頃ですものねぇ」  わたくしよりほんの少し年上なのだから、エリノーラだって『お年頃』でしょうに!  彼女は楽しそうに、ものすっごく丁寧に手入れをされた……。お、お忍びだから、お忍びだから、服を用意してくださったのよ……!  お風呂から上がり、これまた丁寧に髪、顔、身体の手入れをされた。  身体が温かいうちに、ネグリジェに着替えて休むことに…… 「おやすみなさい、お嬢さま」 「おやすみ、エリノーラ」  目を閉じると、エリノーラの言った内容が……。う、ううん。エリオット殿下はそんなことを考える方では……  でも、わたくし、ゲームの彼のことは知っているけれど、この世界のエリオット殿下のことは詳しく知らないのよね。  明日のデートで、きっといろいろな彼を知ることができるだろう。  ちゃんと、向かい合わないとね。  ……緊張して中々眠れない、なんて……わたくしにそんな可愛い感情があったのかと、改めて驚いた。  カリスタとして生きた十八年。婚約破棄イベントをちゃんとしなくちゃって、そればかり考えて生きてきたから……  でも、もうそのイベントは終わってしまった。かなり意外な形で。……だからこそ、わたくしはちゃんと、自分の気持ちにも向かい合わないといけないのよね。
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