エリオット殿下とお忍びデート 3話

1/2
前へ
/19ページ
次へ

エリオット殿下とお忍びデート 3話

◆◆◆  翌朝、扉がノックされる音で目覚めた。ガウンを羽織って、扉に近付く。 「カリスタ、きみの服を持ってきた」 「……! 殿下が自ら……?」  扉越しに声が聞こえる。そっと扉を開き、隙間から服を受け取って「すぐに着替えます」と口にして扉を閉めた。  平民の服なら、ひとりでも着替えられるだろう。そう思ってベッドの近くで着替える。  ……『平民っぽい服』に偽りなく、肌触りはとても良いものだ。  ロングスカートに長袖のシャツ。それからショールを身につけ、帽子をかぶる。  靴も用意されていたから、それを履く。ぴったりだ。  帽子と靴まで用意されていたとは……。姿見に映る姿を確認して、扉を開ける。 「……うん、ドレス姿ではないきみを見るのは、新鮮だね」 「……殿下の格好も新鮮ですわ」 「行こう。今なら抜け出せる」  すっと手を差し出されて、その手を取った。……こんなにラフな格好のエリオット殿下を見るのは初めてだ。  それでも、殿下から溢れ出す気品は隠しようがない。  こんなに気品が溢れた平民がいるのかしら、と心の中でつぶやく。  ――でも、こんなに明るい彼の表情、見たことがないわ。  まだ早朝ということもあり、あまり人の気配がないような気がする。  殿下は「ここ、抜け道なんだ」と抜け道を教えてくれた。  外に出ると、そのまま市場に足を進める。  王城から市場に向かうのにも近道があるようで、そこも教えてくれた。  そして小一時間もかからず、市場について…… 「わぁ……!」  と、思わず声を上げてしまった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加