エリオット殿下とお忍びデート 5話

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エリオット殿下とお忍びデート 5話

 そうね、卒業パーティーで婚約破棄イベントをしなくちゃって思いながら、生きていたから。  わたくしは誰よりも、あなたに幸せになってほしかった。  国を背負う義務を持つ王太子。期待と不安の中で、それでも前を見据えて歩くあなたが好きだから。――好き?  ……ああ、なんだ……わたくし、知らないうちに恋に落ちていたんだ。  だからこそ、殿下と結ばれてはいけないと思って、婚約破棄イベントのことしか考えなかったんだわ。  だって、恋と気付かないまま終わってしまえれば、ダメージが少なくて済むから――…… 「……わたくし、ずっと……殿下はわたくしと結婚してはいけないと思っていたんです」 「カリスタ?」 「エリオット殿下は、わたくしよりも明るくて優しくて……素直な人に、惹かれると思っていたから」  原作のマリーちゃんはそんな子だった。  誰に対しても優しく、嫌がらせを受けてもそんなことを感じさせないくらい明るく、自分の気持ちを素直に言える女の子。  殿下は、そんな子を選ぶと思っていた。 「……明るくて、優しくて、素直な人……に、カリスタがぴったり当てはまると思うのだが?」 「えっ?」  いやいや、そんなことはありません。  だってわたくしは悪役令嬢……を、がんばって演じてきたのだから。  混乱するわたくしに、殿下が手を伸ばして頬に触れる。  ドキドキと心臓の鼓動が大きくなった。  こんなに近くにいて、心臓の音が聞こえるんじゃないかなって、乙女チックなことを考えてしまう。 「きみはどうかわからないが、わたしはずっときみのことを愛しているよ。きみとともに、この国を守りたいと。――カリスタ、わたしとともに、生涯この国を盛り上げていこう」
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