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映画館に早く着きすぎ、時間潰しに、隣接しているゲームセンターに入った。
特に何をするでもなく中を歩いていたら、友達がハマっているアニメのクレーンゲームがあった。
俺は結構上手い方なので、取って贈ってやろうかな。
あいつ、何のキャラが好きだっけ?
狙うキャラを思い出しながらコインを投入する。それと同時に、ゲーム機の中にいた『そいつ』と目が合った。
俺も見たことのあるアニメ。その中には登場しないキャラの人形がこちらを見ている。
その視線に晒されていると背筋が冷たくなっていくのに、どうしても目が離せない。
手が勝手にボタンを操作する。欲しくなんかないその人形を拾い上げてしまう。
ダメだ。落ちろ。その願いも虚しく、運ばれた人形が機械の隅にある取り出し口直結の穴に投下された。
いらない。あんな人形いらない。いや、いらないというより、あれは手にしたらダメなものだ。
ああ、今すぐ誰か通りかかって、あの人形を持ち逃げしてくれないかな。
俺の足が取り出し口に向くまでに。俺の手が人形を取り出してしまう前に。
どうか、どうか、どうか…。
クレーンゲーム…完
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