クレーンゲーム

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 映画館に早く着きすぎ、時間潰しに、隣接しているゲームセンターに入った。  特に何をするでもなく中を歩いていたら、友達がハマっているアニメのクレーンゲームがあった。  俺は結構上手い方なので、取って贈ってやろうかな。  あいつ、何のキャラが好きだっけ?  狙うキャラを思い出しながらコインを投入する。それと同時に、ゲーム機の中にいた『そいつ』と目が合った。  俺も見たことのあるアニメ。その中には登場しないキャラの人形がこちらを見ている。  その視線に晒されていると背筋が冷たくなっていくのに、どうしても目が離せない。  手が勝手にボタンを操作する。欲しくなんかないその人形を拾い上げてしまう。  ダメだ。落ちろ。その願いも虚しく、運ばれた人形が機械の隅にある取り出し口直結の穴に投下された。  いらない。あんな人形いらない。いや、いらないというより、あれは手にしたらダメなものだ。  ああ、今すぐ誰か通りかかって、あの人形を持ち逃げしてくれないかな。  俺の足が取り出し口に向くまでに。俺の手が人形を取り出してしまう前に。  どうか、どうか、どうか…。 クレーンゲーム…完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加