18人が本棚に入れています
本棚に追加
ただいま
ケードリック様がブックヴェール伯爵家で3週間滞在した後の半年後、私は再びノーベルト辺境伯家へ向かう馬車に揺られていた。
但し、乗り心地の良い馬車でケードリック様と一緒に、だ。
「あぁ、なんか緊張する……」
領地が近づくにつれて、ソワソワ落ち着かなくなってきた私。
来月に結婚を決め、先駆けてノーベルト辺境伯家で過ごすことになったのだ。
「どうして。半年以上前とはいえ、3週間も過ごした領地だ。季節はすっかり変わってしまったけど、屋敷の使用人は変わっていないし、両親も歓迎してくれている。緊張することは無いよ、気楽にして欲しい」
緊張をほぐそうとしてくれているのか、ケードリック様は私の頬にキスをし「僕の愛しい花嫁。もう絶対に手放さないからね」とほほ笑んだ。
実家の領地の皆は私の幸せそうな姿を見て、お嫁に行くことを喜んでくれた。マルクスも「甘ちゃんかと思ったら、あいつは中々見どころがある」と納得していた。男同士で何かの勝負をしたんだとか……。
私はお返しにそっとケードリック様の手を握る。
「だけど、前回ろくにご挨拶もせず実家に帰ってしまったから……何て言えばいいのかわからなくて」
再びお世話になります?これからよろしくお願いします?
ケードリック様は少し考えた後、ひらめいたように言った。
「ただいま、でいいんじゃないか?」
了
最初のコメントを投稿しよう!