ただいま

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ただいま

 ケードリック様がブックヴェール伯爵家で3週間滞在した後の半年後、私は再びノーベルト辺境伯家へ向かう馬車に揺られていた。  但し、乗り心地の良い馬車でケードリック様と一緒に、だ。 「あぁ、なんか緊張する……」  領地が近づくにつれて、ソワソワ落ち着かなくなってきた私。  来月に結婚を決め、先駆けてノーベルト辺境伯家で過ごすことになったのだ。 「どうして。半年以上前とはいえ、3週間も過ごした領地だ。季節はすっかり変わってしまったけど、屋敷の使用人は変わっていないし、両親も歓迎してくれている。緊張することは無いよ、気楽にして欲しい」  緊張をほぐそうとしてくれているのか、ケードリック様は私の頬にキスをし「僕の愛しい花嫁。もう絶対に手放さないからね」とほほ笑んだ。  実家の領地の皆は私の幸せそうな姿を見て、お嫁に行くことを喜んでくれた。マルクスも「甘ちゃんかと思ったら、あいつは中々見どころがある」と納得していた。男同士で何かの勝負をしたんだとか……。  私はお返しにそっとケードリック様の手を握る。 「だけど、前回ろくにご挨拶もせず実家に帰ってしまったから……何て言えばいいのかわからなくて」  再びお世話になります?これからよろしくお願いします?  ケードリック様は少し考えた後、ひらめいたように言った。 「ただいま、でいいんじゃないか?」  了
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