ノーベルト辺境伯領地

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ノーベルト辺境伯領地

 1カ月後、お尻を痛めながら4日間馬車に揺られ、ノーベルト辺境伯家に到着した。  道中馬車の窓から見た景色は、確かに自然豊かで美しかった。 「遠い所を呼びつけて、申し訳ない」  辺境伯様とその息子ケードリック様が直々に出迎えてくれた。 「いえ、お招きいただきありがとうございます。先日はお目にかかれずご挨拶できなかったケードリック様には、大変失礼いたしました」  緊張して手足を震わせる私は、笑顔でお辞儀をするのが精いっぱい。  だって、仕方ないじゃない!  1カ月前に見かけた、あの金髪の青年が目の前にいるのだから!  やっとお会いできた!  辺境伯様も年配ではあるけどなかなかの美形だ。  一緒に来た女中のナナと屋敷の使用人によって、荷物は先に部屋へ運ばれた。  私はテラスへ案内された。  テラスは丁度大木の木陰になっていて、周りの生垣には色とりどりの花が咲き誇っていた。その向こう側は畑になっていて、いくつもの野菜が実っていた。  軽い軽食と香り高い紅茶が運ばれ、辺境伯とケードリック様の3人で私の話を中心に雑談をする。  ブックヴェール領地では何が有名だとか、普段どのように過ごすのか。 「普段は裁縫や読書を楽しむ」という回答をするつもりだったが、いざケードリック様を目の前にすると嘘をつきたくないと思ったので、お転婆することを伏せ「村の子供たちとピクニックを楽しんだり、歌を歌ったりしています」と答えた。  教会での手伝いに関しては、令嬢自ら奉仕することを嫌悪する貴族もいるという事で一応伏せておけとお父様に言われたが、もしそんな方だったら悲しいな、と思い、いつかは話してみようと紅茶を戴きながら思った。  しばらくして、ナナと使用人が私を迎えに来てくれた。 「楽しい時間をありがとう。着いて早々休ませもせず申し訳ない。この後もお二人到着する予定でね。食事の時間になったら使いを寄こすので、それまで部屋で休まれると良い。明日から順に屋敷や領地を案内しよう」  辺境伯様と一緒に席を立ったケードリック様は「ガーネット、と呼ばせてもらっていいかな。またゆっくり話そう」と笑顔を残して去っていった。  はぁぁぁっ!イケメン二人に囲まれて、鼻血出るかと思った!!  私はほぼ手を付けられずにいた軽食を戴き、部屋へ戻ってひと眠りした。
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