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「結婚しても、きっと君は辺境伯夫人という立場を窮屈に感じる事だろう。君の自由奔放さは招待する前から知っていた。花嫁候補にあげるために、ずっと前から調査依頼していたからね。だからいつ本当の君を出してくれるのかと楽しみにしていたんだ。だけど今日という日まで、僕には本当の君を見せてくれなかった。それでこのまま結婚したら?君は淑女の振りをいつまで続けるつもりだったんだい?僕は結婚相手を探していたんだ。上っ面の夫婦じゃない、お互いに信頼し合える相手と寄り添いたい。だから、君を選ぶわけにはいかないんだ」
ケードリック様に見初められたいがために、淑女らしく振舞った事が仇になったなんて。
でも本当に緊張もしていた。
それに好きな人に良く思われたいと思う事は、いけない事なのだろうか。
「口を挟むことを失礼します!お言葉ですが……」
「ナナ、やめて」私はうつむき、自分の行いを悔いた。
これ以上、惨めな姿を晒したくない。
私は立ち上がり、深くお辞儀をする。
「この3週間、とても有意義な時間を過ごさせていただいたと思っています。大変お世話になりました」
グッと涙を堪え、最後まで毅然とした態度を貫くことを決めた。
「今回の話は、そちらが僕を見限ったと話してくれて構わない。馬車はこちらで手配するので、帰郷の日程を使用人へ伝えて欲しい。……では、ブックヴェール伯爵令嬢に良い出会いがあることを祈っているよ」
そう言葉を残し、ケードリック様は部屋を出た。
私達は、告知されたその日のうちにノーベルト辺境伯の屋敷を去った。
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