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実家に戻り、3週間が経った。
ノーベルト辺境伯の屋敷を出てから4日後、実家に戻ると家族が「おかえり」と笑顔で出迎えてくれたが、「ただいま」と言えずそのまま塞いでしまった。
引きこもった部屋から出てきたのはそれから3日後。
すこしずつ失恋の傷を癒し、今ようやく美味しいものを美味しいと感じるようになった。
「やっと本当のガーネットに戻ったな。おかえり」とマルクスは言う。
丘の上で一緒にピクニックをしていた村の子供たちも「おかえり」と口々に言い笑顔を向ける。
そうだね、このブックヴェール伯爵家の領地で過ごすことが、本当の私でいられるのかもしれない。
私は今まで飲み込んでしまっていた言葉「ただいま」を、優しく迎えてくれた皆への感謝の気持ちを込めて言おうとした。
「ガーネット」
背後から聞き覚えのある声がした。
目の前のマルクスや子供たちは、私の背後の人物に酷く驚いた表情をする。
「……ケードリック様?」
私は高鳴る胸を抑え、ゆっくり後ろを振り返った。
そこには私が3週間かけて本気で好きになり、3週間かけて忘れようとした相手が少し困ったような笑顔で立っていた。
すかさずマルクスが私を自分の背後に隠す。
「何か御用ですか、ノーベルト辺境伯ご子息の……ケードリック様、でしたっけ」マルクスは苛立ちを隠すつもりは無い、といった口調でケードリック様に立てつく。
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