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麻里子は就職し、ホテルのフロントで働くようになった。泉沢と麻里子は休みが合うと一緒にドライブに出かけた。
そんなことが一か月ほど続いたころ、麻里子は泉沢に電話をかけた。
「泉沢さん。相談があるの」
「今、運転中。あとでかけなおすよ」
二人は仕事を終えた後、以前よく使っていたファミレスで落ち合った。今日も、二人を待っていたかのようにいつもの窓際の席が空いていた。
「顔が曇ってる。どうした?」
「うん。あのね。私、急に転勤することになって…」
「へえ、どこ?」
「沖縄です・・・」
「すごいじゃん! ホテルチェーンで沖縄に行くって多分出世コース!」
「部長もそう言ってたわ。でも・・・、でもね。泉沢さんだったらどうする?」
「どうするって、会社の辞令なら当然行くじゃん」
「例えば好きな人がいて、それで離れ離れになるとしたら?」
「それは状況によるな。でも、吹田さんが迷うことなんかないじゃん」
「え・・・あ、はい。そうですよね」
「良かった。知り合いが沖縄にいるなんて。オレ絶対に遊びに行くよ!」
ウェイターが注文を取りに来た。麻里子は涙をこらえながら、無理に笑顔を作った。
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