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それから二人は、しばしば会うようになった。
「泉沢さん、私、やっと採用に慣りました! 正社員です」
雪が解け始め、春の暖かい風が吹き始めた3月下旬のある日、麻里子は泉沢に電話をかけた。
「今、運転中だからあとでかけなおすよ」
夕方に、いつものファミレスで二人は待ち合わせた。いつものように泉沢は作業着姿で現れた。そしていつもの窓際の席に二人は座った。
「今日は、ケーキを頼もうか」
「ありがとう」
「で、どこに決まったの?」
「ホテルのフロントです」
「へえ」
麻里子がホテル名を言った。
「全国チェーンの大手じゃん。吹田は、ホテルの仕事って似合いそうだな」
「やっと、就活地獄から解放されます。あの、泉沢さん。今度の休みの日に、一緒にどこかにお出かけしませんか?」
「ドライブとか? 休みの日まで運転させる気?」
「あ、ごめんなさい」
「冗談だよ。どこでも連れて行ってやるよ」
「ありがとう」
麻里子は微笑んだ。
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