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こんな奴らのせいで、楽しい時間が台無しになってしまった。腹が立って、飴玉で糖分補給した。
「荒川が……自分を責める必要はないからな」
「はあ……そんなことな」
「やっぱ、責めてたか」
家に着いて部屋に行って、後ろから抱きしめた。優しいこいつのことだから、自分を責めていると思っていた。
悪いのはあいつらであって、お前じゃないからな。優しく抱きしめられて、顔を見せ合った。
首に腕を回して、キスをした。ベッドに押し倒されて、首筋にキスをされた。
僕がお願いすると、激しいキスをしてくれた。これをされると、体の力が抜けて行ってしまう。
「んっ……違っ……んあっ」
恥ずかしいが、声が漏れてしまう。それ以上に、求められるのが嬉しくなってしまう。
イチャイチャしていると、妹さんが入ってきた。いつもの如く、怒られてしまう。
でも何となくだけど、この状況を喜んでいるように見える。気のせいで、あってほしいと願うことしかできない。
「遊園地、遊園地」
「あまりはしゃぐと、転ぶぞ」
「僕はそんな子供じゃない」
「子供並みに、はしゃいでいるけどな」
夏休みに入って、僕たちは遊園地に遊びに来た。はしゃぎすぎて、自分のことしか考えてなかった。
初めて彼氏との、遊園地デートで舞い上がってしまった。完全に疲弊してしまったようで、自責の念に駆られてしまう。
ベンチに寝かして、膝枕をした。頭を撫でると、少し顔色がよくなったようだ。
「その……ごめん。ついはしゃい……ゴホンッ、気が付かなくて」
「いいんだよ。お前が楽しんでくれれば」
「荒川、ありがとな。でも、二人で楽しまないと」
「山城……」
疲れていたようで、食い気味で寝たいようだった。素直に甘えてくれて、僕は嬉しかった。
何故か路地に連れて行かれて、キスをされた。人通りが少なかったが、子供に見られてしまった。
恥ずかしかったが、とても充実している。それから、予約していたレストランに向かった。
「すみません。予約していた山城です」
「はい、承っております」
ここは父さんが、行きつけのお店だ。詳しくは知らないけど、セレブ御用達になっている。
平然としているが、初めて来るお店で心臓が破裂しそうだ。緊張のあまり、変なことをしないように気をつけないとな。
遊園地の敷地内にあるが、遊園地に行かなくても入れるようになっている。
荒川は、右足と右手を一緒に動かしている。その様子が可愛くて、緊張が解れてしまう。
「あ、のさ……ここ、お高いだろ」
「んー、そうでもないぞ。ほら」
何も驚いていないように、メニューを見せた。ここで慌てると、カッコ悪いからな。
昨日父さんから、「荒川さんの息子さんに、何か美味しい物でも食べさせなさい」連絡があった。
電話でもなく、メッセージアプリからだった。久々に連絡しておいて、それだけかよ。
そう思ったが、思いっきりその言葉に甘えることにした。いつもお世話になりっぱなしで、何も返せてないからな。
「後で返すから、今は頼む。お土産代とかもあるし」
「いい。今日は奢りだ」
「でもな……そんなわけには」
「別に構わない。気にするな」
父さんが、いいって言っている。これ以上、変に気を遣わせたくない。
こいつは、大雑把に見えて繊細なところがある。今日ぐらいは、何も考えずに遊んでほしい。
レストランでお腹を満たしてから、次の目的地へと向かった。メリーゴーランド、昔母さんと乗ったな。
「あのさ……俺は外で見て」
「乗りたくないのか……お前と乗りたかった」
「……分かったよ」
楽しかったが、今では嫌な思い出になってしまった。だからこそ、お前との思い出に変えたい。
辛かったことも、お前となら前に進んでいけるから。思っていたよりも、風が気持ちいい。
「楽しいな」
「そ、りゃあ良かった……」
「楽しくないのか……」
「わあ、楽しいなあー」
楽しくないようで、悲しくなってしまう。するとわざとらしく、喜んでいた。
それから、色んなアトラクションに乗った。完全にヤケクソで、楽しんでいる様子が面白かった。
お化けのところに行くことになって、内心震えていた。荒川が乗りたいのなら、頑張ろうと思う。
お化けなんて、非科学的なものは全然怖くない。全然怖くないったら、怖くないんだ。
「ウギャアア!」
「山城さん?」
「怖い!」
怖すぎて、自我を失っていた。荒川にひっついて、絶叫してしまう。
頭を撫でてくれて、恐怖が和らいでいった。嬉しくなって、甘えてしまう。
「絶叫じゃない。あれは、発声練習だ」
「まあ、そういうことにしておこうか」
アイスを食べていると、前にも来たことがあったことを知った。元カノと、一緒に来たのだろうか。
分かっていても、嫉妬してしまう。僕は自分でも思っているよりもずっと、荒川が好きらしい。
「あのさ、何かあったのか」
「あっ、どうして」
「何か、考えてたみたいだから」
思っていることを告げると、本当のことを教えてくれた。自分の気持ちが、こんなにも大きくなっている。
昔のことなんて、気にする必要はない。頭では分かっていても、どうしても割り切れない。
家族と来たのを知って、急激に恥ずかしくなった。自分がこんなに、嫉妬深いなんて知らなかった。
「……わ、忘れてくれ」
「忘れないよ。山城の貴重な嫉妬だもん」
僕の嫉妬で、嬉しそうにしてくれた。そのことが嬉しくて、恥ずかしくなった。
熱を冷ますために、残りのアイスを一気食いした。頭がキーンとして、痛かった。
食べ終わった後は、手を繋いでのんびりしていた。この時間が、ずっと続けばいいのに。
「あれ? 山城だ〜」
「お前みたいなのが、遊園地とか」
「ウケんな〜」
楽しい時間は、直ぐに終わってしまった。中学の同級生に声をかけられて、胸が痛くなった。
忘れたい過去を、強制的に思い出させてくる。嫌いだったら、何で話しかけてくるんだろ。
放っておいてほしい。ただ男が好きってだけで、惨めな思いをしてしまう。
いじめられていたことも、無視されたていたことも。こいつにだけは、知られたくない。
――――嫌われたくない。
荒川は僕を抱きしめてくれて、優しく微笑んでくれた。それだけのことで、少し落ち着いてしまう。
「何? オタクら、付き合ってんの?」
「ウケんだけど〜」
「小嶋、コイツらマジかもよ〜」
「うわっ、睨んでんもんな」
小嶋のこと、ただ見た目で好きになってしまった。好きでいたかっただけで、それ以上なんて求めていなかった。
それなのに、まだ僕のことを嫌っているのかよ。ただの片思いだったのに、こんな人気の多いところで暴露されてしまった。
――――それ以上に、荒川には知られたくなかった。
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