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「リージェ! いるか⁈」
腰に一本の剣、片手にも同様の得物を持ったまま、銀色のポニーテールを揺らす少女が勢いよくドアを蹴り開ける。続けざまに踏み込んだ床に、ぽたぽたと赤い雫が飛び散った。
「メルテ……⁈ やっと帰ったと思ったら、それ……!」
リージェはそんなメルテの姿を目にして蒼白となった。
メルテの防具は動き安さ重視で露出が多く、胸元と腰以外はほぼ素肌だ。そのせいかさらされている肌は以前に増してどこも傷だらけで、中でも負ったばかりらしき腕の傷口からはいまだに血が流れ続けていた。
「もう……! すぐ診せてください!」
リージェはすぐさま傍へと駆け寄った。片手で掴んだメルテの腕を心臓よりも上へと掲げさせ、急くように他方の手を傷口へと翳す。十センチほど低い場所から見上げてくる瞳は赤く大きく、髪色の長い睫毛に縁取られていた。
リージェは僅かに目を細め、ややして小さく唇を動かした。翳されていた手のひらに淡い熱と光が灯る。メルテとは裏腹に首元からつま先まできっちりと着込んだ法衣の裾がふわりと揺らいだ。
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