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もともと小柄なメルテはうさぎのような俊敏な動きを得意としていたが、安易に敵の懐に飛び込むような戦法もとりがちだった。術具が自分の上背に合わせた双剣――要は一般的なものよりも短い――ということもある。
肉を切らせて骨を断つ。以前リージェの目の前で脇腹を抉られた際にも、結果無事任務達成となったあかつきにはそう言って笑っていたことを思い出す。
何度窘めようと勝気な性格のメルテは改めない。大丈夫、死ぬ気はないと言い張って笑うだけ。最初こそ相棒(バディ)として行動を共にしていたリージェだったが、結果としてそんなメルテを見続けていくことに堪えられなくなり、自宅に残ることを選んでしまった。
……だけど、だけど。
リージェはそっと顔を上げる。
久々に目にする――けれども見慣れた――メルテのあどけない寝顔を見つめていると、やっぱりその傍にいたいという思いがこみ上げてくる。
幼い頃からずっと一緒だったメルテの無事を、ここで祈るだけでなく、自力でからがら帰ってきたメルテを癒すだけでなく、しっかりその隣に立って、この先も共に――。
とはいえ、今まで通りではきっとまた破綻する。心を強くもとうとは思うけれど、どうしたってメルテは勝手にその上を行ってしまうのだから。
「……そうだわ」
それならとリージェは思案した。そして寝室を後にする。向かった先は、自身の研究室(アトリエ)だった。
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