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「それでは、明日の午後3時頃、またお迎えに上がります。今夜は心ゆくまでプレイをお楽しみください」
運転手はそう言うと、ドアの向こうへ消えていった。
俺達が案内されたのはかなり年季の入った洋館だった。
元々は赤色であったであろう三角屋根は色褪せていて、薄汚れた壁は緑の蔦で覆われている。
窓枠に嵌められた錆びた鉄格子が何だか異様な雰囲気を醸し出している。
それでも内部は綺麗に清掃されていて、1泊2日程度ならば快適に過ごせそうだった。
俺達は2階に4部屋ある個室にそれぞれ荷物を片付けると、広々としたキッチンに集まった。
「うわっ、すげー。和牛ステーキ肉もあるぞ」
自分が用意させた筈なのに、高星は冷蔵庫の中身を眺めながら感嘆の声を上げる。
この館の中のものは自由に使っていいらしい。高星は案内状にそう書いていた。
「ステーキと……。簡単にパスタなんかを作ればいいかしら?」
「おお、身和ちゃんの手料理が食えるのか。最高だね」
そう言って肩に乗せようとする高星の手をするりとかわすと、藤好は戸棚を開けて調理器具をチェックしてゆく。
「生野菜も豊富にあるみたいだから、適当にサラダ作ってくれる?」
「わかりました」
大自は几帳面に白シャツの袖を捲ってみせた。
ジューシーな和牛ステーキとアサリの旨みが凝縮されたボンゴレとグリーンサラダの夕食を済ますと、俺達はリビングに集まった。
「やっぱり先ずはこれでしょう」
藤好は棚の上に積み重ねられたボードゲームの中から『locked room』の箱を手に取った。
「もちろんです」
大自は頷いてみせる。
「にしても、よくこんな『locked room』の世界観にぴったりの物件、見つけられたもんだな」
「そうだな」
高星は人ごとのようにそう呟いてから、何やら高級そうな赤ワインを手に取った。
「乾杯しよーぜ」
「いいね」
室内の灯りをキラリと返すワイングラスを受け取ると、そこにルビー色の液体がトクトクと注がれてゆく。
「僕はこれでいいです」
大自は冷蔵庫からノンアル缶を取り出した。
「私はカシオレ」
いつの間にか高星の手には缶ビールが握られている。
「そんじゃ、『ボドゲ愛好会』5年ぶりの再会に乾杯!」
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