朝日和斗

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「あー、ちくしょう!」  思わず声を上げると俺は頭を抱えてみせた。 「朝日君、相当鈍っているようですね」  勝った大自が目を線のようにして笑う。 「老化じゃね?」 「うっせーな」  高星のセリフに俺は口を尖らせる。 「それにしても……この家ってどの部屋も圏外なのかしら。家族に連絡が取れないわ」  スマホをいじっていた藤好が「ふう」とため息をつく。 「僕の部屋も圏外でしたよ」  ポケットからスマホを取り出してみると、自分のスマホも圏外になっている。 「なあ高星、そもそもここってどの辺なの?」  途中で寝てしまったから現在地が全くわからない。ここに着く時には日が傾いていたから、結構車で走ったようだけど。 「そんなん知らねーよ。俺も寝ちゃってたし」 「えっ? だってお前幹事だろ?」 「んな訳ねーじゃん」 「どういう……こと?」  俺は恐る恐る残る二人に視線を向けた。 「私じゃないわよ」 「僕も高星君だと思ってました」 「えっ! てことは……まさか……」  この中にいないもう一人の同期メンバー。  臆病者のオクビこと奥尾柔志(おくお やすし)……。  彼がこの4人を集めたってことなのか?  彼が参加しなかった、いや、できなかった卒業合宿のように……。  俺達をこの館に閉じ込めて、復讐をしようとでもしているのか……。  いやいや、アイツにそんな度胸がある訳がない……。  俺は慌ててリビングを飛び出した。  けれと、スマホを色々な向きに翳してみせても、アンテナは1本も立たなかった。  外ならば……。  丸い形をした古いドアノブは、回してみても右にも左にも動かない。  そして古い一枚板のその扉には、鍵らしきものは見当たらなかった。  おかしいと思っていたんだ。いくら昨日仕事が忙しかったからって、他人の車でそんな簡単に眠ってしまうなんて。  きっと車内でもらったジュースに何か入っていたんだろう。  あれは誰から渡されたんだっけ……。 「閉じ込められたってこと?」  藤好は細っそりとした腕を組んでみせる。 「リアル『locked room』なんて気が利いてんじゃん」  そう言う高星の横で、いつも通りの表情を見せる大自は相変わらず何を考えているのかわからなかった。  
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