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俺は急いで自分の部屋に戻ると、持ってきた荷物をキャリーケースの中に詰め込んだ。
閉じ込められたとはいえ、外観は崩れ落ちそうな古い家だ。
窓の鉄格子だって錆びて脆くなっているだろう……。
俺はキャリーケースを思いっきり振り上げる。
そして……。
俺は再びそれを床の上にゆっくりと下ろした。
落ち着け。
大体こういう密室モノは、パニクって単独行動に走ったヤツが最初に殺されるんだ。
きっとオクビはどこからか見ている筈だ。
俺は部屋の中の家具を動かし始めた。
どこだ。
どこだ。
けれど、ゴミ箱の中を漁っても、シーツを剥がしマットレスを持ち上げても、隠しカメラらしき物は見当たらない。
「オクビ……いや、奥尾! 聞いてるんだろ? イジメていたのは俺じゃない。高星に命令されてたんだ」
これは嘘って訳じゃない。
ジュースを買ってきてやると言って金を徴収しておいて4本しか買ってこないとか、奥尾がゲームで負けるようみんなで結託するとか、メッセージアプリをブロックするとか、卒業合宿の集合場所をデタラメ教えたのも全部高星が言い出したことなのだ。
俺は、いつもオドオドしてるくせにボドゲの時だけ妙に大胆になったり、イジメても特に堪えた様子も見せない奥尾にちょっとムカついていただけだ。ただそれだけ……。
「そ、それに、ゲーム中の個人攻撃、一番えげつなかったの大自だ。あ、あと藤好はお前のことヘタクソって言ってたぞ。いったフリするの大変だったって」
これも嘘じゃない。本当のことだ。
俺は何もない空間に向かって叫び続ける。
「俺はみんなを止めようとしてたんだ。ほ、本当だよ!」
これは嘘だ。
でも、俺はこんな所で死にたくなんかない。
「そうだ……奥尾、お前の復讐手伝ってやるよ」
集められたのは4人。
この中でなんとしても生き残らなければ。
昔の仲間を犠牲にしてでも……。
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