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 これは…  いったいどういうことなの 私は竹居くんの家の前で、かつてないほどに緊張していた。聞けば家は私と反対方向だったから、せいぜい駅まで一緒に帰ればいいだろうと思っていたのに。 『君に見せたいものがあるんだ』  そう言われて断りきれなくて、結局家までついてきてしまった。お母さんはいらっしゃるとのことだったので、それはそれで緊張するけれど、彼がやましい気持ちで誘ったのではないと確信できたので、来てみることにしたのだ。 「どうぞ」 「あ、うん」  玄関を開けると、早速お母さんらしき女性が出迎えてくれる。 「あらー。いらっしゃい。女の子が来てくれるなんて嬉しいわ」 「こ、こんにちは。桜井(あや)です。お邪魔します」 「どうぞ。上がってちょうだい」  緊張のせいか、ローファーさえも上手く脱げない。 一人でどぎまぎしていると、ちりんと鈴の音が聞こえた。顔を上げると毛足の長い大柄な猫と目があった。 ラグドールかな。尻尾をふわっと揺らして、ブルーの瞳が涼しげだった。  かっ 可愛い♡ 違うドキドキが私の中で始まる。 「ふぶき。お客さんだよ」  竹居くんに呼ばれて、猫は「にゃぁん」と優しく鳴いた。転びそうになりながらお家に上がった私は、しゃがんで猫に手を伸ばした。ふぶきは私の指の匂いをふんふんと嗅いでから、ほっぺたをぐいーっとこすり付けてきた。  わあ… 初対面なのに怖がらないで、しかもすりすりしてくれるなんて、猫派にとってはたまらないご挨拶だ。 「よかった。君がいい人だってわかってるみたい」 「そうなのかな。嬉しいよ」  うちにもこないだ公園で拾った可愛い黒猫がいる。ふぶきの匂いがしたらヤキモチ妬いちゃうかな。 「ふぶー。おいで。桜井さんも」  竹居くんは軽々と猫を抱き上げて階段を登って行く。私はお母さんに小さく会釈をして彼について行った。
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