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👔 ②
思った通り、彼女は猫が大好きだ。
ふぶきは元々物怖じしないし、きっと歓迎してくれると思っていたが、予想以上に彼女を虜にしてくれた。
まずは成功かな
僕だって恋愛慣れしてるわけじゃないから、どうやって彼女と仲良くなればいいかわからない。でも、まずはお互いに猫が好きだってところから、何か掴めればって思ったんだ。
「そっち座って。お茶とお菓子もらってくるね」
「ありがとう」
ふぶきをベッドに下ろして、僕は部屋を後にした。
キッチンでは母親がもう準備してくれていた。何だか僕より浮かれているようなのは気のせいか。
「可愛い子ね。ふぶきも気に入ったみたいだし」
「うん。猫は好きなはずなんだ」
「はい、コレ。頑張ってねー」
…何をだよ
にこにこしている母親から、トレーにのせた紅茶とクッキーを受け取った。階段の途中で、僕の部屋から何かが床に落ちる音と悲鳴が聞こえた。
急いでドアを開けると、彼女が放心したように僕を振り返った。
「どうしたの」
「あ、ごめんなさい。机の上の本を崩しちゃって…」
「何だ。そのくらい、平気だよ」
僕はほっとしてローテーブルにトレーを置いて、床に散らばった本を片付けようとした。
あっ
思わず声が出そうになった。一冊のカバーが少しめくれて、表紙が見えてしまっている。
よりによって この本が…!
彼女もその本をじっと見つめていたが、僕が焦りながらその本を掴むと、はっと息をのんだ。
「あれ? これ姉さんのだ。何でここにあるんだろう」
白々しく聞こえるのは後ろめたさがあるからだ。でも、ここは何とか乗り切らなきゃ。指が震えないように気を付けながらカバーを直して、他の本も集めていく。桜井さんも一緒に片付けてくれて、ほっと息をついた。
「ありがとう」
僕はにっこり笑いかけたつもりだったけど、内心はドキドキが止まらなかった。なぜなら、その本は僕が愛読しているBL小説だったからだ。
僕が腐男子だって
バレてしまうところだった
僕は何食わぬ顔で彼女にお茶をすすめた。
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