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 思った通り、彼女は猫が大好きだ。 ふぶきは元々物怖じしないし、きっと歓迎してくれると思っていたが、予想以上に彼女を虜にしてくれた。  まずは成功かな 僕だって恋愛慣れしてるわけじゃないから、どうやって彼女と仲良くなればいいかわからない。でも、まずはお互いに猫が好きだってところから、何か掴めればって思ったんだ。 「そっち座って。お茶とお菓子もらってくるね」 「ありがとう」  ふぶきをベッドに下ろして、僕は部屋を後にした。 キッチンでは母親がもう準備してくれていた。何だか僕より浮かれているようなのは気のせいか。 「可愛い子ね。ふぶきも気に入ったみたいだし」 「うん。猫は好きなはずなんだ」 「はい、コレ。頑張ってねー」  …何をだよ  にこにこしている母親から、トレーにのせた紅茶とクッキーを受け取った。階段の途中で、僕の部屋から何かが床に落ちる音と悲鳴が聞こえた。 急いでドアを開けると、彼女が放心したように僕を振り返った。 「どうしたの」 「あ、ごめんなさい。机の上の本を崩しちゃって…」 「何だ。そのくらい、平気だよ」  僕はほっとしてローテーブルにトレーを置いて、床に散らばった本を片付けようとした。  あっ 思わず声が出そうになった。一冊のカバーが少しめくれて、表紙が見えてしまっている。  よりによって この本が…! 彼女もその本をじっと見つめていたが、僕が焦りながらその本を掴むと、はっと息をのんだ。 「あれ? これ姉さんのだ。何でここにあるんだろう」  白々しく聞こえるのは後ろめたさがあるからだ。でも、ここは何とか乗り切らなきゃ。指が震えないように気を付けながらカバーを直して、他の本も集めていく。桜井さんも一緒に片付けてくれて、ほっと息をついた。 「ありがとう」  僕はにっこり笑いかけたつもりだったけど、内心はドキドキが止まらなかった。なぜなら、その本は僕が愛読しているBL小説だったからだ。  僕が腐男子だって  バレてしまうところだった 僕は何食わぬ顔で彼女にお茶をすすめた。
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