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🎀 ③
どうしよう
私は紅茶を少しずつ飲みながら、頭の中でぐるぐると考えていた。
さっき表紙が見えていた本は、私がいつも読んでいるBL小説なのに、竹居くんはなんで庇うようなことを言ったんだろう。きっと私のだってバレてるはずだよね?
ふぶきがベッドから机の上にひょいと乗ったので、私も近づこうとした時だった。はじっこに積んであった本を崩してしまったのだ。床に落ちたそれを拾おうとして、あの本の表紙が目に入り、固まっているところに彼が戻ってきてしまった。何冊かはちょうど私のトートバッグを目掛けて落ちていったので、私はとっさに自分のだと思ってたんだけど。
『姉さんのだ』
偶然なのかな
確認したかったけど、あったはずの自分の本がやっぱり見当たらないので、あれは私のだと思う。
名前が書いてあるわけじゃないけど
どうにも落ち着かない。
私が腐女子だとわかったら、竹居くんにどう思われるか…
「…桜井さんてば」
「はいっ」
呼ばれているのに気がついて我に返った。
「このクッキー美味しいよ」
「あ、ありがとう」
せっかく竹居くんのお家に来たのに、ふぶきとも仲良くなれそうなのに。紅茶もクッキーも味がよくわからない。
ベッドの上でふぶきがごろんと寝転んだ。
そうだ こういう時って
逆に話題にした方がバレにくかったりする?
さりげなく褒めたりとか
…いやいや
何で知ってるのって突っ込まれるか
「さっきの本さ」
竹居くんが急に話し出した。
「結構話題になったらしくて。知ってる?」
こ これは
天の助けか!
「あー、聞いたことはあるかな。…BL、なんだよね?」
「うん。初めはびっくりしたけど、何て言うかイヤらしいのじゃなくて、ブロマンスっていう…」
「うん! 男の子同士の濃い友情って感じの絆がアツいんだよ! …って何かで聞いたの」
『ブロマンス』と聞いて、私はついに黙ってられなくなった。BLよりも恋愛要素が少ない結びつきを差す言葉だが、まさにその絆に私はハマってしまったのだ。
「そうなんだよね! 僕も姉さんにそう聞いて、ちょっと気になってさ。読んでみる?」
「いいの?」
竹居くんは片付けた本からさっきの一冊を取り出した。お姉さんのものがあったのは本当らしい。自分のは後で見計らって回収しよう。
私はすっかり安心して受け取った本を開いた。
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