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こういう時って変に隠しだてするより、開き直った方が突破口が開けるって聞くよな。姉貴には申し訳ないけど、本の内容自体は恥ずかしいものじゃないという気持ちはあったから、僕は思いきって話を振ってみた。 『ブロマンス』というワードに、桜井さんは目を輝かせて飛び付いてくれた。そんなにも女子を魅了する言葉だとは知らなかった。これは上手く行くかもしれない。 僕が本を手渡すと、彼女はそっとページを開いた。 「あれ」  本の間に何か挟んである。付箋でもなさそうだし、何だろう。少し気になってそれを引っ張り出すと、それはカラフルなブックマーカーだった。  でも コレ僕のじゃないけど… ふと気がつくと、桜井さんが本を開いたまま固まっている。 「桜井さん? どうしたの」  僕が尋ねるとびくっと肩を震わせたけど、彼女は黙ったままだ。そっと覗き込むと耳まで赤くなって、今にも泣き出しそうだ。 「え。どうしたの。具合でも悪いの?」  言葉が出ないのか、彼女はぶんぶんとかぶりを振った。僕は呆気に取られてブックマーカーを見つめていたが、不意に答えが見えてしまった。  まさか そんなことって  じゃあ いつも彼女が読んでたのは… ろくに話もしたことないのに、性癖がバレたら気まずいよな… 今にも消えてしまいたい思いだろう。こぼれそうな涙がいじらしかった。僕はふうっと息をついた。自分も腐男子の端くれだ。見過ごすわけにはいかない。 「気が合うね、僕たち」  桜井さんがやっと顔を挙げた。頬を染めて瞳が潤んでる。僕は安心させるように微笑んだ。 「この人の本、結構好きなんだ。貸してあげよっか」 「竹居くん…」 「猫も好きだし本の趣味も合うなんて、僕は嬉しいよ」  桜井さんは少しだけ口角を上げた。 「うん。私も嬉しい。ありがとう」  そう言って笑った彼女に、僕はまたときめいてしまったんだ。ふぶきは大きなあくびをして毛繕いを始めた。
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