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「竹居くん。早く」  今日はあの小説の新刊が発売される。もちろんふたりとも予約をしたから、学校が終わったら本屋さんへ直行だ。 「お待たせ」  竹居くんが笑顔で私に追い付いた。 「あの続きがどうなるんだろうね」 「私、また泣いちゃうかも」  うきうきしながら並んで歩いていると、学校の外に出たところで、竹居くんが私の手をそっと握った。彼の体温が伝わってくる。 「本も楽しみだけど、僕たちの続きも気にならない?」 「え…」 「今度の日曜日、映画見に行こうよ」  竹居くんが優しく笑う。私の鼓動は性懲りもなくスピードを上げる。でも、嬉しい気持ちはちゃんと伝えなきゃ。 「うん。楽しみにしてる!」  繋がれた手がどんどん熱くなる。 『気が合うね、僕たち』  あの時、大袈裟じゃなく竹居くんが王子様に、いや、神様に思えた。こんな気遣いまで出来る人に想われて、幸せだなって思った。私も彼にふさわしい女の子になりたくなった。 でも、彼といるといつもドキドキして、振り回されっぱなしだ。恋を始めたばかりの私は、まだしばらく混乱が続きそうな気がしている。
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