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 昼休みのざわめきの中、私はちょっと焦ってる。 目の前には同じクラスの竹居(たけい)くんがいる。それだけじゃなくて、私に微笑みかけている。その笑顔があまりに素敵すぎて気が遠くなりそうだ。 でも、彼が私に優しい理由がわからない。 私は学年で五本の指に入るくらい成績はいいけど、人付き合いは苦手。いじめられてはいないけど、基本ぼっちで過ごすことが多い。 そんな地味で冴えないJKに、クラスでも人気者の竹居くんが声をかけてくれるなんて、やっぱりこれは夢に違いない。そうだ、そうに決まってる。 私は読んでいた本から視線を外してチラッと彼を盗み見る。間違いなく彼は私を見つめていた。どうしていいかわからずに、また本に集中するふりをするが、さっきから一文字も頭に入ってこない。  わーん  嬉しいけど どうすればいいの 一人でドキドキしてるのが彼にも、他のクラスの人たちにも伝わってないといいなと思う。 「…ダメかな?」  ちょっと悲しげな雰囲気で彼が尋ねてきた。  えっ  何か聞かれてた…?  返事しなきゃ 「あ、ううん。大丈夫」  何の話かさっぱり思い出せなかったけど、聞いてなかったともダメだとも言えるはずがなく、私はそう答えてしまった。すると、竹居くんはすごく嬉しそうに一段と輝く笑顔になった。 「よかった! じゃあ、授業が終わったら一緒に帰ろうね!」  はうっ  そ そんなこと言われてたのかっ 「あ、ありがとう。あとでね」  心臓が身体中にあるみたいに、あちこちがどくどく揺れている。ほっぺたも熱いし、どう見てもバレバレかもしれない。  まあ  帰るだけなら ね 気を取り直して、読書を嗜む姿を装う。 窓から入り込む五月の爽やかな風が、私を優しく冷ましてくれる。  そう  それくらい 小学生でも出来る 少しずつ乱れた呼吸と鼓動がおさまっていく。午後の授業には差し支えなさそうだ。 そして放課後、私の考えが甘かったことが明らかになる。
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